緩やかな連合へ舵を切るダイムラー
ダイムラーとフィアットが提携交渉を進めていることがドイツ紙で報じられた。ダイムラーは1998年に米クライスラーと合併、世界再編の引き金を引いたものの、合併は失敗に終わって再出発したばかり。今回は開発や生産などでの業務提携となる見通しで、経営統合にこだわらず事業補完での緩やかな連合へと舵を切り直す。
両社の提携交渉は、ドイツの『フランクフルター・アルゲマイネ』が12日に電子版で報じた。フィアットのルカ・モンテゼモロ会長が提携交渉を認めたとしている。
提携の内容は、ダイムラーのメルセデス部門とフィアットの乗用車の共同開発や生産と見られている。プラットホームやエンジンの共通化などを進め、ダイムラー側は『Aクラス』および『Bクラス』という小型車モデルの競争力強化につなげる狙いという。
◆F1でしこり残る両陣営だが‥‥
今季F1の2強でもある両グループは、スパイ事件をめぐってしこりが残っている。フェラーリはフィアットが85%を出資する子会社であり、モンテゼモロ会長はフェラーリの会長も兼務している。ただ、量産車ビジネスの世界は別と割り切っているようだ。
ダイムラーとフィアットには米メーカーとの経営統合という共通の過去もある。ダイムラーがクライスラーとくっついたように、フィアットも2000年に米GM(ゼネラルモーターズ)と資本提携した。
フィアットはGMの完全子会社になることで一時は合意したが、GMの経営悪化もあって、この筋書きは崩れた。今回の提携が実現すれば、米メーカーと決別した者同士による緩やかな欧州連合となる。
◆ことごとく不調に終わった資本主導型の提携
業績回復の著しいフィアットは、多面的な提携によって自立の足取りを確たるものにしつつある。スズキとの提携もそのひとつだ。
得意とするディーゼルエンジンを技術供与する一方、スズキからは世界的なヒット車となっている『SX4』を調達して、顧客層の拡大につなげている。
こうした「足りないところを補い合う提携」(張富士夫トヨタ自動車会長)は、今世紀初頭までの資本主導型の提携がことごとく不調に終わったのを受け、世界の自動車産業の新たな潮流ともなってきた。90年代末の世界再編を主導したダイムラーが補完型の提携強化に踏み出すことで、その動きは一段と加速する。