【神尾寿のアンプラグド】2011年に向けて動き出す「周波数獲得」合戦(前編)

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2007年は今後5年の動向をめぐり、ターニングポイントの年になりそうだ。

自動車業界の視座では、5年後の2012年は「IT新改革戦略」で定めた交通事故死亡者5000人以下達成と、「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書(京都議定書)」の第一約束期間が終了する年である。

そのため今年から、ITSをはじめとする安全・環境への取り組みは、掛け値なしの実行フェイズに入らなければ間に合わない。これから始まる5年は、日本の自動車産業・ビジネスにとって正念場と言えるだろう。

一方、モバイル通信産業の視座でも、2007年から始まる5年は多くの注目ポイントがある。その中でも国内市場の注目は、2011年から2012年にかけて行われる「周波数再編」である。


◆2011年に行われる大規模な周波数再編

周知のとおり、携帯電話やテレビをはじめとする電波を使うすべてのサービスが、厳密に割り当てられた周波数配分の中で提供されている。

この電波の中で、信号の伝送に利用可能な周波数帯は限られており、様々な事業者やユーザーが好き勝手に利用したら大混乱に陥るからだ。そのため電波の割り当ては国が責任を持って行い、事業者は取得した周波数帯域の中でサービスを提供する。

例えば、自動車産業に目を向けると、ETC/DSRCで使われている5.8GHz帯、ミリ波レーダー用の70GHz帯などが“クルマ向け”で割り当てられた既得周波数帯になる。

2011年、この周波数割り当ての大幅な見直しが行われる。既存の割り当て位置の変更や入れ替え、すでに形骸化した事業・サービスへの割り当て廃止などもある予定だが、中でも注目されているのが、アナログテレビ終了によって空白になる帯域の行方だ。

このアナログテレビ終了で空くのは、VHF/UHF帯の「90M−108MHz」「170M−222MHz」「710M−770MHz」の3カ所。その中でも700MHz帯はモバイルデータ通信利用の特性がよく、激しい獲得合戦が行われるのは必至だ。通信業界、自動車業界、放送業界が虎視眈々と狙っている。


◆携帯電話業界と放送業界が手を組む

700MHz帯は多くの事業者が獲得に名乗りを上げるが、特に強力な“タッグ”になっているのが、携帯電話業界と放送業界の連合だ。いわゆる「通信と放送の融合」を実現するという名目で、700MHzの獲得に向けて強力に動き出している。

例えば、昨年11月にはNTTドコモとフジテレビ、ニッポン放送、スカイパーフェクト・コミュニケーションズ、伊藤忠商事が、5社の共同出資による合同会社「マルチメディア放送企画 LLC合同会社」(略称MMBP)を設立すると発表している。

MMBPは地上デジタル放送/ワンセグと同じISDB-T方式による新たなマルチメディアサービスの研究や技術調査、サービスモデルの検討を目的とし、2011年のアナログ放送後の周波数獲得を目指すことを明言している。ドコモは携帯電話市場で人気が高まっている「ワンセグ」の延長線上として、民放各社と手を組んで700MHz帯を狙っていく。

KDDI、ソフトバンクモバイルも動き出している。2005年12月、KDDIはクアルコムジャパンと共同出資で「メディアフロージャパン」を設立。翌2006年7月にはソフトバンクが全額出資で「モバイルメディア企画」を立ち上げ、モバイル向け放送の可能性を模索し始めた。どちらも米QUALCOMMが開発した携帯向け放送技術「MediaFLO」の採用を検討しており、クアルコムジャパンはMediaFLOで700MHz帯の獲得を目指している。

ちなみにMediaFLOは、イギリスで試験放送が開始されており、アメリカ市場では近日中に商用放送がスタートする模様だ。日本のテレビ局各社はISDB-T方式を推すが、MediaFLO方式は北米市場を背景にグローバル展開に力が注がれているのが特徴である。

現在、“モバイル向け放送”での700MHz帯獲得の動きは、ドコモを中心とするMMBP、KDDIのメディアフロージャパン、ソフトバンクのモバイルメディア企画の3つに分かれている。採用を検討する技術も、ドコモがISDB-T方式、KDDIとソフトバンクがMediaFLO方式という状況で、“一枚岩”というわけではない。

しかし、携帯電話業界は安価かつ迅速に対応端末を普及させられる力があり、放送局は新たなサービスに載せる豊富なコンテンツを持つ。700MHz帯の獲得合戦において、携帯電話×放送のタッグが最も注目であるのは間違いないだろう。
《神尾寿》

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