いよいよ新しい時代が来たなぁって感じです。トヨタ『パッソ』&ダイハツ『ブーン』。簡単にいっちゃうとダイハツ『ストーリア』の後継にあたるリッターカーで、技術的にはユニークなスタイルと、トヨタ『ヴィッツ』より短いボディの中に大人5人がじゅうぶん乗れる優秀なパッケージングと、新作の1リッター3気筒エンジン、低価格がウリだ。
しかし業界的には政治的背景、つまり今回から親会社のトヨタが「商品企画」を担当し、共同開発した点が興味深い。前のストーリアはダイハツが独自企画で作ったリッターカーを「トヨタでも売った」って図式だったからね。
そして実際の開発、生産は従来通りダイハツが担当。雑誌づくりなら、もしや外部から急に編集長がやってきたような不思議な感覚だったのだろうか? チーフエンジニアのダイハツ工業、相坂忠史さんに聞いてみた。
相坂:仕事そのものは昔と変わらないんですよ。トヨタさんの『プロボックス』や『タウンエース』などは委託されて作ってましたから。
小沢:なるほど。でも“共同開発”ですよね。
相坂:逆にいうと自己主張が難しかったですね。トヨタさんはヴィッツよりもうちょっと小さい、いわば“軽”に近いユーザーを取りたい。ですが私たちは軽ユーザーがステップアップしたくなるクルマが作りたい。ヴィッツより短いボディで、ヴィッツより室内が広くなったのはそういうわけです。
小沢:具体的に難しかったのはどこですか。
相坂:コストから開発時間からすべての目標が挑戦的。プレッシャーは今までで一番。なにしろ名誉会長も直々お見えになりましたから。
小沢:それって豊田章一郎さん?
相坂:そうです。今回、ダイハツはそのために全社活動をしました。毎月特別会議をして、開発、生産はもちろん経理から物流からすべての体制を見直したんです。
どうやら“単なる新機種”ってことでは語れないクルマのようである。(つづく)