発売1か月で18万台超という驚異的な受注台数のニュースには本当に驚いている。安価な価格設定だけでなく、エコカー減税に助成金と好要因がそろったのも大きいが、肝心のクルマ自体の訴求力なくして、この数字はなかったはず。
VWアウディグループの環境戦略は、小排気量化と過給でトルクを落とさず、CO2を減らそうというものだ。わかりやすく言えば、絶対的な排気量を小さくして燃費を改善し、必要に応じて過給で力を補うということになる。
少し前までBMW『X3』の独壇場だったカテゴリーに、先ごろメルセデスベンツ『GLK』が名乗りを上げたばかりで、そこにアウディ『Q5』も戦線に加わったわけだが、結論からいうと、このカテゴリーでベストといえる仕上がりだった。
筆者の中で、登場時と現在の印象がこれほど大きく変わったクルマも珍しい。BMWは非常に好きなブランドのひとつで、これまで3台を乗り継いだほど。しかし、現行『5シリーズ』について、デビュー当初に抱いたのは「嫌悪感」だった。
アウディ『A6』がマイナーチェンジでV8をなくし、過給機付きの3リットルV6エンジン搭載車をトップモデルとして据えたことに驚いた。これはひたすら拡大指向で進んできたプレミアムカー界では異例のアプローチである。
アッパーミドルクラスのサルーンと言えば、どのブランドでもコンサバな存在になりがちだ。だが、BMW『5シリーズ』は違う。フロントマスクからして、その目つきは猛禽類の鋭さを感じさせ3シリーズよりもアグレッシブな印象がある。
ラージクラスのSUVは、市場環境の変化で時代の逆風にさらされている。だが、ここにきてミドルクラスの注目度が一気に向上。
ヘタなスポーツカーは軽く置いていかれるほど速く、コーナリングに優れている。シャープに向きを変え、コーナーに進入しても、前輪駆動にしては例外的にリアタイヤがよく粘る。
かつて、スポーティなワゴンの代表として『カルディナ』が一時代を築いた。ただ、ワゴン市場が縮小するなかでフェードアウトするかのように消えていった。だが、その代役を『ウィッシュ』が担う。
復活アバルトの真打ち登場といった感がある。今後、このビジネスモデルが成功すれば、過去の栄光のように、小さくてかわいくて格好よくて過激なオリジナルスポーツカー登場もありえるかもしれぬが、しばらくはコイツがアバルトの主役だろう。