【スズキ ワゴンR 新型試乗】「MTが少ない」と嘆くあなたに、『ワゴンR』があるじゃない…中村孝仁

スズキ ワゴンR ZL(MT車)
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近頃MT(マニュアルトランスミッション)車が少なくなったとお嘆きのあなた、「スズキ『ワゴンR』があるじゃない」と言いたくなるモデルである。

【詳細画像】スズキ ワゴンR ZL(MT車)

えっ? 今どきMTなんていらないでしょ? という人もいるでしょう。でも、MTの良さって、自動車をAT車よりも活発に走らせることができる魔法の杖、じゃなくて、シフトレバーがあるのですよ。

トールワゴン全盛の軽自動車界にあっては、現行ワゴンRは背の低い部類に入る。ところが元祖トールボーイは、実はワゴンRが火付け役であったことを忘れてはならない。

スズキ ワゴンR ZL(MT車)スズキ ワゴンR ZL(MT車)

しかし、そんなワゴンRも時代の流れにはついていけず、スズキもフェードアウトを考えたそうだ。だから現行モデルは6代目だが、その誕生は実に2017年に遡る。つまりマイナーチェンジが施されているとはいえ、すでに誕生から9年が経過した、年季の入ったモデルなのである。

2025年暮れに、比較的大掛かりな変更が加えられ、スタイルこそ変わらないものの、ADASの充実や、ボディの構造にも少なからず変更を受けている。ただし、車種とグレードは大幅に削減されて、選べるのはハイブリッドの「ZX」と、ガソリン仕様の「ZL」の二つに絞られてしまった。その中で今回チョイスしたのが、MT仕様のZLである。

◆昔ながらのMTの魅力とは

スズキ ワゴンR ZL(MT車)スズキ ワゴンR ZL(MT車)

では一体どこにMT車の魅力を感じられるのか? という点であるが、大きなポイントは、ターボ車でなくても性能の低さを感じさせないほど、活発に走ってくれるという点。さらに、AT車と比べてもWLTCの燃費が良好で、走り方によってはATを凌駕する燃費性能が得られること。そして何よりも「運転する楽しさ」を感じられることである。

この「運転する楽しさ」は、自動車が白物家電化した今となっては、ある意味では死語かもしれない。しかし、明らかに自分の足となり手となって、動かしているという実感が味わえる点では、AT車よりもはるかに楽しいのである。

今どきのMT車の多くは、苦手だった坂道発進でも、後ろに下がらない機構がついていたり、あるいはクラッチの繋ぎに失敗してエンストした時も、わざわざニュートラルにギアを戻さず、そのままクラッチを踏めばエンジンが再始動する機構などがついているのだが、残念なことにそうした機構は、ワゴンRのMTには付いていない。

だから、昔ながらの操作方法、即ち坂道では心配ならサイドブレーキをかけて、クラッチ操作と同時にサイドブレーキを解除する方法が必要だし、エンスト時は、やはりいったんギアをニュートラルに入れて、再度スタートボタンを押す必要がある。この二つの機構がついていれば、MTファンをさらにこのクルマに呼び戻すことができるのではないか、というのは考えすぎなのだろうか。

◆MTが高齢者の運転寿命を延ばす

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筆者は個人的に、いかにして高齢者の運転寿命を延ばすことができるか、という検討会の委員をしている関係から、「高齢者はマニュアルに乗りなさい」を推奨している。理由は漫然運転を防止する効果があるし、クラッチ操作は適度な運動にも繋がっていると考えるからである。

もちろん人間がミスを犯すという大前提から、より自動車の側で助ける機能が充実し、ドライバーは楽ができるようになっているのだが、MTの良さは自分で運転してみても、AT車よりも緊張感が高まり、結果として注意散漫になることが少ない。

ZLというグレードは、いわばベーシックグレードなのか、ADASなど安全面の装備は充実しているものの、インテリアを見渡して豪華だという印象は受けないが、もっともそれで十分である。日常の使い勝手だって、これでOKという気がしてならない。

◆全高、室内空間は申し分なし

スズキ ワゴンR ZL(MT車)スズキ ワゴンR ZL(MT車)

ワゴンRの全高は、今ではトールボーイとは言えないのだろうが、個人的にはこれで十分と思える。リアドアはいわゆるヒンジドアである。スライドドアではない。だから隣に車が止まっている時などは少し気になる。

室内に関して、空間的には申し分なしだ。娘の買い物に付き合って、IKEAから重い家具を購入して帰ったのだが、軽々とその荷物を飲み込むスペースがあった。リアシートはもちろん倒せるし、前後にスライドも可能。

ただ、スライド機構はテールゲートから操作できず、ドア側から背もたれを倒すには、中央についたスイッチを操作せねばならず、ドアを開けてこれを操作するためには、ヒンジドアを大きく開ける必要がある。何故シート背もたれ両端に装備しなかったのか疑問が残る。

余談ながら、リアドアのインナーには傘立てが装備されて、濡れた傘を置いておくには非常に便利である。

◆原点を感じさせるクルマ

スズキ ワゴンR ZL(MT車)スズキ ワゴンR ZL(MT車)

前述したが走りは活発そのもので、AT車の場合、NA車はターボ車に比べて我慢の比率が高かったが、MTならそんな我慢はほとんど無用である。因みにターボ車は、昨年のマイナーチェンジで姿を消している。

MTは、自分の都合でのんびり走るも活発に走るも運転次第だから、ずぼらも可能だし、ワインディングを楽しむのも可能だ。ただ、少し感じたことは、2速と3速のギア比が離れていて、上り坂などではどうしても2速で引っ張ってやる必要があった。

5速はオーバードライブレシオで高速などでの静粛性を考えると、離れていて仕方がない。だからタウンスピードは実質4速なのだが、その4速がどちらかといえば5速よりで、結果2速と3速が忙しくなるというギア比である。

また、ギアのストロークもだいぶゆったり目で、素早いシフトには不向き。まあそんな車ではない…ということなのだろうが、とにかく原点を感じさせるクルマである。

スズキ ワゴンR ZL(MT車)スズキ ワゴンR ZL(MT車)

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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