アイシンといえばトランスミッションはもちろん、eアクスルや熱マネジメント、バッテリー骨格部品や、バイ・ワイヤを含むブレーキにステアリング、空力デバイスやドア周りの車体関連など、車両の多彩な領域をカバーするメガサプライヤの雄。BtoBイメージは強いが、「ジャパンモビリティショー2025」では一般の自動車ユーザーに向け、かなり思い切ったブース展示を展開した。その名も「A'sガレージ」だ。
◆サプライヤのブースとは思えないほど薄暗くムーディなブース
「A'sガレージ」をコンセプトにブースを展開したアイシン(ジャパンモビリティショー2025)まるでUFOのようなブース外郭には、中央にステージが誂えられ、「次のショーはXX時」といった具合。アイドルのトークか歌の演し物でも繰り広げられるのか?といった雰囲気だが、ステージについては後ほど説明するとしよう。
まず「A's GARAGE」とネオン管風のグリーンの照明が掛けられたエントランスをくぐると、サプライヤのブースとは思えないほど薄暗い展示室が広がる。フツーは細かなパーツを見せるために煌々と明るいのが、サプライヤの展示の定石というものだ。ところが、この“ガレージ内”は、全盛期の1980年代のレコードジャケットのようなグリーンとピンクのネオン文字風の照明と、補助的にスポット照明があるのみで、めっぽう薄暗い。
「A'sガレージ」をコンセプトにブースを展開したアイシン(ジャパンモビリティショー2025)
アイシンのカバー領域を示したカットモデルや車内置き去り防止ミリ波レーダー、最新のeアクスルにアドヴィックスのブレーキシステムといった製品群はもちろん並べられているが、ガレージというよりは、まるでカフェバーか何かだ。壁は黒板になっていて、「アイシンの知能化」について解説や概念図が、キレイにまとめられたノートのようにチョーク書きで描かれている。「走る・止まる・曲がる」とか「移動に新たな付加価値」って、カッコいいことなんじゃないかと思えてくるほどに。
◆ヤングも興味津々なホログラムとステージ
ふり返ればテーブルというよりは作業台の上に、トランスミッションやeアクセルの展示が置かれて、“ヤング“な説明員と来場者が談笑している。しかも見せるだけでなく、体験コーナーにまで高度な技術を落とし込んでいる。ホログラムのCG映像を、プレイステーションのコントローラで来場者自らが操作しながら、トヨタのハイブリッドシステム「THS」の各ブロックを3Dで展開したり回転させたりできるというものだ。
「A'sガレージ」をコンセプトにブースを展開したアイシン(ジャパンモビリティショー2025)仕組みとしては、閲覧者の左右の目の位置をカメラで読み取って、各人ごとに合わせて僅かに左右にずらした映像を投影し、3Dで立体的に見せられるという。聞けば、CADの設計データをそのまま読み込んで、自前の3D画像エンジンで走らせているそうで、メタバースでこれまでに培ったノウハウなのだとか。CADデータに付随するメタデータを読み込んだり、部品ごとの細かな動きを捕捉するプラグインまで、自社開発しているという。もちろん設計図や部品の属性データも、一元管理して各部署で共有できるのだとか。
その一方で、ラウンジスペースには8速ATのカットモデルや、アイシン初のMTであるトヨタ『2000GT』用のそれが飾られていたりする。ガレージスペースの一隅には、電子基板やコネクタのハンダ付けをするための作業机が再現され、ハンダ付けがギークかつエモい作業として演出されている。
「A'sガレージ」をコンセプトにブースを展開したアイシン(ジャパンモビリティショー2025)圧巻は、ステージ上のショーが始まると、ガレージ内のネオン管風照明が知らせてくれることだ。何がステージ上で起こっているかといえば、どうやら未来からきた博士の愛車だとかいう設定(バック・トゥ・ザ・フューチャーか)の『ランクル80』が、本来ならありえない観音開きスライドドアとスカイブルーの内装を披露している。当然、アイシン得意のリンク式パワードアのモジュールを利用したもので、下の階ではレクサスやセンチュリーの最新プロトタイプにも使われているであろう機構が、ここではあえて80ランクルに用いられているのだ。
「心を動かす未来の移動」と銘うって、モビリティや知能化技術を、かくも楽しく令和アクチュアルに見せてくれるのは、リクルートにも少なからずいい影響があるのだろう。アイシンの将来にますます期待したい。
「A'sガレージ」をコンセプトにブースを展開したアイシン(ジャパンモビリティショー2025)◆リアルでこそ感じられるモビリティのエモさ
ちなみにアイシンのブースとは真逆の、「昭和おじさんホイホイ」は、東ホールの最東端スペース、「モビリティ・カルチャー合同展示~タイムスリップ・ガレージ~」にあった。プリンス・グロリアや初代クラウンといったオールドタイマーもあれば、デロリアン~トヨタ初代セルシオ~ホンダ・マクラーレンMP4/4が縦列にならぶ様子から、ランディ・マモラのRGΓ500にカワサキKR350、YZRにNSR、三菱ランサー・エボやスバル・インプレッサWRX等々。昭和末期~平成初期のアイドルともいうべき車やバイクが、メーカーを横断して一同に会しているのだ。
しかも添えられた車両解説テキストのテンションが、ふるっている。それはもはや、昭和モビリティ・ポエム、あるいはレクイエムとさえいえるものだ。
やはり現地に足を運んでリアルに体験することの感動や大切さは、お茶の間やトイレで画面スワイプして読み捨てているだけでは、伝わらず感じられない。だからこそモビリティはエモい、という話なのだ。
「A'sガレージ」をコンセプトにブースを展開したアイシン(ジャパンモビリティショー2025)









