来たる8月27日、オンラインセミナー「ドイツ自動車業界のEVシフトに立ちはだかる障壁」が開催される。セミナーに登壇するのは、在独ジャーナリストの熊谷徹氏。
熊谷氏は、日本放送協会(NHK)報道局・特報部(国際部)、のちワシントン支局を経て独立。その後はドイツ・ミュンヘン市に在住し、ドイツ統一後の変化、欧州の安全保障問題、欧州経済通貨同盟などをテーマとして取材・執筆活動を行うジャーナリスト。著書に「偽りの帝国・緊急報告フォルクスワーゲン排ガス不正の闇」(文芸春秋社)など多数。
今回のセミナーは以下のテーマで進められる。
1.ドイツのEVシフトの現状(政府目標、新車登録状況、充電インフラ)
2.ショルツ政権がBEV購入補助金を突然廃止し、新車登録台数が激減
3.EUの対中追加関税にドイツは猛反対
4.欧州自動車工業会は、BEVに固執。「後戻りはあり得ない」
5.ドイツが重視する合成燃料にEUが高いハードルを設定。実用化は困難か
6.欧州議会選挙での保守・極右躍進とEUの自動車政策
7.質疑応答
セミナーの見どころを熊谷氏に聞いた。
EV減速 ドイツ現地の状況とは
これまでEVの普及を引っ張ってきた欧州においても、このところEVの販売減速が伝えられています。長年ドイツに住む在独ジャーナリストの熊谷徹氏は、この状況をどのように見ているのでしょうか。
「ドイツの自動車業界が当初期待していたほどには、EVの売り上げが伸びていないのが現状です。政府は野心的な目標を掲げていますが、達成は容易ではないとみられています」
「昨年末のドイツ政府による突然の購入補助金廃止が、EV市場に大きな影響を与えたようです。その結果、EVの新車登録台数が大幅に減少し、従来型の内燃機関車の人気が再び高まっています」
熊谷氏は、充電インフラの整備も課題の一つであり、政府は意欲的な目標を掲げているが、現状とのギャップは大きく、短期間での達成は非常に困難だと話します。
「また、EVの価格帯も普及の障壁となっているようです。手頃な価格帯のEVが少ないことが、一般消費者にとって大きな課題となっています」
ドイツのEVシフトが停滞する背景
ドイツのEVシフトが停滞する背景には、さまざまな要因が絡み合っています。ウクライナ侵攻の影響やインフレ、景気後退など、不透明な情勢が続いていることも大きな要因の一つだといいます。
「中長期的には、ドイツおよびヨーロッパの自動車業界がEV中心にシフトする大きな流れは変わりません。ただし、このシフトの速度については、紆余曲折が予想されます」
「ドイツの現在の経済状況や、EU全体の政策動向などの制約が、EVシフトの進展にどのような影響があるのかに注目しています」
ドイツの景気停滞と自動車産業への影響
ドイツの景気停滞については、日本でも報道が増えているが、現地在住の熊谷氏はどのように感じているのでしょうか。