ワールド・ドゥカティ・ウィーク(通称:WDW)はドゥカティ最大となるファンイベントで、7月22~24日の3日間、ドゥカティ本社からもほど近いミサノ・ワールドサーキット・マルコ・シモンチェリで開催された。
WDWは1998年に初開催。今回で第11回目を迎えたWDWには全世界より8万人が来場と、4年ぶりの開催は大いに盛り上がった。名称からもわかるように、主にドゥカティ乗り (ドゥカティスタと呼ぶ)のためのイベントであるが、その規模は想像を遥かに超える大きさとなっていた。

バイク乗りの方であればドゥカティの存在はよくご存知と思われるが、メーカーの規模としては国産オートバイメーカーには遠く及ばない。ボルゴ・パニガーレにある本社と工場の規模も決して大きくなくそこだけを見れば「どうして?」と疑問にも思う。

それにも関わらずこれだけの人々が集まるのは、長い歴史とマシン造りにかける情熱があるからだろう。とりわけレースに捧げる情熱は凄まじいものがある。例えば2輪最高峰のレース、MotoGPには現在4チーム合計8台のマシンが参戦。 (全エントリー24台の内8台がドゥカティで、最多数を占める)そしてそのレーシングマシンから最新テクノロジーがフィードバックされた市販マシンをリリースすることも、多くの熱狂的ファンが生まれている理由だ。
同イベントにはヨーロッパ各国から多くのライダーが自走で参加。地続きであるヨーロッパだからこそ盛り上がる一面もあるが、バイクで来場することは叶わなくとも、世界中84ヶ国から参加があったというからドゥカティスタの情熱には驚くばかり。

金曜日の開場となった直後、ミサノのパドックは瞬く間に真っ赤に埋め尽くされていく。マシンはパニガーレを筆頭とするスーパーバイク系はもちろん、ムルティストラーダ、モンスター、ディアベル、スクランブラーなど多種多様。事前に聞いていたムルティストラーダが圧倒的に多いということもなく、現行ラインナップに加えて、新旧様々な年式のドゥカティが入り混じる。
年齢層も若年層から年配まで幅広いライダーがおり、タンデムでの参加も多く見られた。夫婦やカップルだけでなく親子というケースも珍しくない。これだけの同志とただ集まるだけでも楽しそうなものであるが、コンテンツも満載。

メインイベントは、ファクトリーライダー達によるパニガーレによるガチンコレース「レノボ・レース・オブ・チャンピオンズ」。加えて、世界チャンピオンのアントワーヌ・メオによるデザートXのデモライド、スタントショーやドゥカティに関わる様々な人物のトークショーなど、3日間を通して会場中でひっきりなしに行われている。
カスタムマシンやレーシングマシンの展示もあちこちにあるが、来場者のカスタムマシンに高い完成度のバイクもあり、それらを眺めているだけでも楽しめる。

また、2023年発表のニューモデルをクローズドの室内で特別に見ることが出来るプログラムがあったり “DRE”(ドゥカティ・ライディング・エクスペリエンス)というドゥカティ独自のトレーニングプログラムには、ミサノのコースを使用したレーストラックアカデミーを実施。ムルティストラーダやデザートXを用いて特設のダートコースを走る“DREアドベンチャー”もミニバージョンで開催された。
そして最新モデルを公道で乗ることのできる試乗セッションもあり、見るだけでなく自ら走って参加できるコンテンツも充実していた。

初日最大のクライマックスは、来場したライダーが参加するドゥカティスタパレードだろう。同社の代表であるクラウディオ・ドメニカーリ氏を先頭に、同社のファクトリーライダー達がパレードを先導。ミサノサーキットを1周した後、そのまま近隣の町、リッチョーネのビーチに向けて進んでいく。

“ビッグ・レッド・スネーク”と呼ばれたパレードの終着地ではスクランブラービーチパーティーが開催されているという粋な計らい。伝統的ドゥカティのパッションにスクランブラーらしい自由な雰囲気が調和した、陽気で開放的なパーティーは日付が変わるまで続けられ、初日からボルテージはマックスに達していた。ということで前半はここまで。後編は1番の盛り上がりを見せたレースオブ・チャンピオンズと2023年のニューモデルを中心に解説する。