低下する自転車マナー、免許がない自転車を取り締まる難しさ【岩貞るみこの人道車医】

自転車マナーの低下を踏まえ、警察庁は対策強化を呼びかける。写真はイメージ
  • 自転車マナーの低下を踏まえ、警察庁は対策強化を呼びかける。写真はイメージ

自転車のマナーの悪さは筆舌に尽くしがたい。もちろん、全員がそうというわけではないが、三車線道路のセンターよりを逆走している自転車を見たときは「死にたいのか!」と叫びたくなった。

近年、電動立ち乗りスクーターが人気となり警察庁も道交法の整備を進めているが、自転車の使われ方とバランスをとる必要があるため苦労していると感じている。

自転車の無秩序を改善すべく、警察庁では2007年に道交法改正を行ったものの、その後発生した東日本大震災を機に都心部を中心にスポーツタイプの自転車が一気に増え、さらにコロナの影響もあり、改正による改善どころか量の増加と質の低下が進んでいる気がする。

交通事故全体の発生件数は減少傾向にあるものの、自転車による対歩行者事故は横ばいで、しかも、その半数近くが、歩行者が優先であるべき歩道や横断歩道で発生している。さらに、自転車対自動車事故のうち、死亡重傷事故の約7割には、自転車にも違反がある。前述のとおり、ひどい運転をしている人は本当に多いのだ。

2022年1月に通達された警察庁の自転車対策

警察庁は改めて自転車対策を強化すべく2022年1月、全国の警察に対して通達を出した。

安全対策の三本柱は、
(1)自転車通行空間の整備
(2)交通安全教育や広報啓発
(3)交通違反に対する指導取締り
である。

(1)は、現在、自転車には走る場所がないという意見が多く、歩道と車道を縦横無尽に走らざるを得ない理由になっている状況を改善しようというもの。我々ドライバーに関連する部分としては、「パーキングメーター及びパーキングチケット発給設備が設置されている道路では、利用率などを勘案して撤去を検討(一部抜粋)」である。これまで使っていたパーキングスペースが、ある日突然、自転車専用通行帯になる可能性もあるので注意したい。また、自転車走行を妨げる違法な駐停車車両についても「取締りを積極的にせよ」とある。

(2)の、安全教育と広報啓発は、「自転車安全利用五則」(って、一般にどのくらい認識されているのかわからないが)を活用し、「自転車は車道走行(13歳未満は歩道走行可)」とか、「歩道は歩行者優先」「止まれの標識では止まる」など、基本的なことを改めて伝える。ちなみに、車道の右側走行は3か月以下の懲役、または5万円以下の罰金であり、その他も同様に厳しい罰則が規定されている。警視庁の自転車安全利用五則のサイトには、内容とともに罰則が載っているので、自転車ユーザーは改めてその厳しさを確認し気を引き締めたいものである。

また、自転車が引き起こす死亡重傷事故が後を絶たないことからも、点検整備や損害賠償責任保険への加入も求めていく。

(3)の、指導取締りは、警察にしてみればこれまでも苦労してきた部分だ。それゆえの現状、日本全国無法地帯状態でもある。

しかし、そうは言ってはいられない。警察庁では今回、「自転車指導啓発重点地区・路線」を選定する。駅前や幹線道路など、管轄する警察署が選んだ地域で、集中的に実効性のある指導警告を行うことで、自転車も軽車両であり、道交法を守る義務があることを理解してもらう作戦である。場所等は各警察署のサイトなどで告知とのこと。つかまった後、「聞いてないよ!」「知らなかった」と言いたい気持ちはわからないでもないが、そもそも自転車をちゃんと使っていればしょっ引かれることない。

このように場所を決めて取り締ることで、「このエリアを走るときは、ルールを守らなくては」という意識づけになる。道交法を守ってもらうと同時に、そのほかの地域を走る場合にも習慣づけが期待できるというわけだ。これまでのように、あちこちで、ときどき、わらわらやるよりも効果が期待できるし、効果があるよう、“優良チャリダー”の方々に於かれては、積極的に手本になっていただきたいと思う。

免許がない自転車を取り締まる難しさ

自転車の取締りはむずかしい。自転車には免許証がなく、ルール違反時には罰則や罰金のない「自転車指導警告票」しか渡せないのだ。ただ、2015年に改正された道交法により危険行為をしたとみなされた違反者には「自転車運転車講習制度」を受けさせることが可能になった。「小学生のときに習ったルールなんて覚えてないよ」と愚痴る人にも、ルールを学んでもらう仕組みである。

しかし、つかまったときに身分証明書を持っていなければ本人確認ができない=講習を受けさせられないのではと思うのだが、警察庁に確認したところ、「運転免許証や学生証等の身分証明書の提示のほか、家族等の関係者に確認する方法等がある。」とのこと。方法等の「等」については詳しく教えてくれなかったけれど、警察をなめてはいけないのである。

なお、都市伝説的に、自転車で飲酒運転をすると赤切符が渡され、自動車運転免許証が免停になると言われているが、自転車の違反行為は、自動車の免許制度の違反対象に規定されていない。ただし!「違反行為をした人が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあると認められる場合には処分が行われることはあり得ます」とのこと。

そう、自転車に免許制度はないとはいえ、軽車両ということは改めて肝に銘じ、交通社会の一員として、子どもたちの手本になる走行をしたいものである。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。最新刊は「世界でいちばん優しいロボット」(講談社)。

《岩貞るみこ》

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