余市-小樽間はBRTも選択肢、鉄道存続なら新駅も…北海道新幹線の並行在来線問題

塩谷~小樽間を行くH100形の普通列車。同区間を含む余市~小樽間は鉄道存続が強く模索されているものの、BRT化も遡上に載っている。
  • 塩谷~小樽間を行くH100形の普通列車。同区間を含む余市~小樽間は鉄道存続が強く模索されているものの、BRT化も遡上に載っている。
  • 4月の会議から見直された収支予測。全線鉄道存続での初期投資額の減少が大きい。
  • 余市~小樽間鉄道存続の場合、検討されている新駅(赤丸部分)。同区間は沿線の市街化が進行しており、途中に2駅しかなく駅間が長い現状は、実態に合っていない。
  • バス転換の場合に検討されているルート。小樽付近は通学の足を考慮して、文教地区を通る南側のルートも遡上に載っている。
  • 函館本線“山線”:余市~蘭島
  • 函館本線“山線”:蘭島駅

北海道はこのほど、北海道新幹線並行在来線(長万部~小樽)問題を協議している後志ブロック会議について、11月4日に開かれた10回目の協議内容を明らかにした。

存廃が議論されている函館本線長万部~小樽間については、渡島ブロック会議が検討している函館~長万部間とともに、4月にJR北海道からの経営分離から30年までの収支見通しが示され、全線鉄道存続、余市~小樽間のみ鉄道存続、全線バス転換のいずれも赤字を避けられない結果となっていた。

しかし、今回の会議では4月に提示された予測がさらに精査され、初期投資額、単年度の赤字額ともに見通しが改善された。

とくに全線での鉄道存続については初期投資額の改善が顕著で、38億4000万円の減となっている。予備車両数の見直し(22両から16両)、大規模補修額の見直し、JR北海道からの譲渡資産の簿価見直しが行なわれた結果で、8000万~9000万円改善した単年度収支では、インバウンド観光客の利用や運賃値上げ、小樽駅の業務委託化などが考慮されている。

余市~小樽間のみ鉄道存続のケースでは初期投資額が7億6000万円減、単年度赤字が1億3000万~4000万円の減となっているが、今回の会議では、このケースでの利便性向上策も提示されている。

これは新駅の設置や増発がおもな柱で、余市~蘭島間の余市町内と塩谷~小樽間の長橋付近に駅を新設することが考えられている。いずれも病院や学校、商業施設が至近にある箇所で、余市側の新駅は382人、小樽側の新駅は604人が往復利用すると見込まれている。

運行本数は現行の16往復半から39往復とし、最小35分間隔を28分間隔に。車両数は2両編成3本と予備2両とされている。

また、余市~小樽間をバス高速輸送システム(Bus Rapid Transit=BRT)化する案も提示されているが、鉄道跡地を専用道化する場合、築100年以上となる構造物の維持や急峻な地形での安全対策などの課題があり、一般道が混雑する余市付近の一部区間を専用道化することなども考えられている。

一方、全線バス転換の場合、鉄道に沿うルートのほかに、塩谷駅付近から大幅に南側を迂回し、小樽市内の高校に近いルートを走行する案も検討されている。

なお、次回の会議は12月に予定されているが、ここで方向性を確認するとしており、並行在来線問題は正念場を迎えることになる。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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