隊列走行する自動運転バスに試乗、精度や乗り心地は?…JR西とソフトバンクが公道で実証へ

一般車両が混在しない専用道で自動運転バスを隊列走行

専用道と一般道の交差部を想定した信号・踏切制御の検証も実施

公共交通機関だからこそ欠かせない自動運転の社会的受容性

JR西日本とソフトバンクは「自動運転・隊列走行BRTの実証実験を2021年10月より共同で進めてきた
  • JR西日本とソフトバンクは「自動運転・隊列走行BRTの実証実験を2021年10月より共同で進めてきた
  • 隊列走行中は約15m(±4m)の間隔を開けて走行する
  • 「自動運転・隊列走行BRT」実証実験に使われた大型バス。フロント中央には光通信用の送受信機が、ほかにもLiDARやミリ波レーダー、カメラ、アンテナが備わる
  • 実証実験の走行中は基本的に運転手は乗車したが、一切の操作は行っていない
  • 2台での隊列走行後、3台目が到着するのを待ち、合流後は3台での隊列走行となった
  • 運行管理からの管制はもモニター上で表示される。3台目が合流して「走行許可」が出た状態
  • 正着制御ではここまで縁石に寄せられている。自車位置の測定が高精度であることの現れだ
  • 周辺の障害物検知はLi-DARを使って実施されていた

JR西日本ソフトバンクは9月15日、専用テストコース上で実施していた「自動運転・隊列走行BRT」開発プロジェクトの実証実験を完了したと発表。次のステップとして2023年11月より公道(広島県東広島市)での実証実験を開始し、2020年代中頃の社会実装を目指す。

◆一般車両が混在しない専用道で自動運転バスを隊列走行

この開発プロジェクトは、まちづくりと連携した持続可能なモビリティサービスの早期実現を目指して2020年3月にスタートした。「ASMobi(先進モビリティ)」「BOLDLY」「日本信号」「ソフトバンク」「JR西日本」の5社が参加し、それぞれの要素技術を組み合わせて運行管理や信号システムの設計・開発を行ってきた。

2021年10月からは滋賀県野洲市にあるJR西日本の専用テストコースにおいて「自動運転・隊列走行BRT」の実証実験に入り、ここでは3種類の自動運転車両(連節バス・大型バス・小型バス)を用いて検証。これまでの1年10ヶ月間で試験走行した距離は、のべ1万4000kmにも及び、安全な運行に至る十分な検証結果が得られたという。

発表された「自動運転・隊列走行BRT」は、一般車両が混在しない専用道を使って自動運転のバスを隊列走行させるというものだ。運転手が座る自動運転レベル3の先頭車に、自動運転レベル4の後続車が一定の間隔で追従して走行する。専用道を使うことで安全性が高く、大量の人を効率よく運べるバス輸送が可能となり、これが将来のドライバー不足に役立っていくとして期待されているのだ。

実証実験では、連節バスの自動運転を活用しながら、大きさの異なる3種類の車両を需要に応じて組み合わせる走行試験が基本となった。

バスの自動運転技術にはより高精度な測位を可能とするRTK-GNSSと、路面に貼り付けた磁気マーカーを組み合わせることで自己位置推定を行える技術を搭載。これにより、駅やバス停において、ほぼすき間なく正確に横付けできる正着制御を実現可能とした。特にRTK-GNSSによる自車位置の測位については、ソフトバンクが独自に設置した全国約3300カ所の基準点を利用しており、この結果、位置情報を走行中で20cm前後、停止時は数cm前後という高い精度で追い込めているという。

正着制御ではここまで縁石に寄せられている。自車位置の測定が高精度であることの現れだ

◆専用道と一般道の交差部を想定した信号・踏切制御の検証も実施

実証実験では、信号・踏切連携を行うことで、BRTの位置情報に基づく単一車線区間での交互通行制御や、専用道と一般道の交差部を想定した信号・踏切制御の検証を実施。先頭車のドライバー操作による隊列内の全車両のドア開閉、車内アナウンスを可能にしたほか、信号・踏切との連携やダイヤに基づいた運行管理システム、プライベート5Gや光無線を使った車車間通信など多岐にわたる検証を行った。

隊列走行にあたっての車両同士の通信は、クラウド経由のV2NV2(Vehicle to Network to Vehicle)、ミリ波通信、光無線通信という3種類の通信方式を採用し、エラー発生時に互いを補完する冗長性も保たれている。また、路面からの電波の反射にも対応するため、複数のアンテナを活用するダイバーシティ技術も活用。さらに、運行管理システムからの指示による隊列形成/解除を行ったり、遠隔地からの車内外監視、車両の位置に応じた乗客向けアナウンス・表示を自動で行うことも実証実験の内容に含まれた。

「自動運転・隊列走行BRT」実証実験に使われた大型バス。フロント中央には光通信用の送受信機が、ほかにもLiDARやミリ波レーダー、カメラ、アンテナが備わる

発表当日は、メディア関係者向けに実証実験のメニューに沿った試乗体験会も実施された。1.1kmの短いテストコースではあるが、その中には連節バスが通過するにはかなりきついコーナーが2カ所あるほか、踏切を模した遮断機や交差点を想定した信号機も設置。また、正着制御を試せるよう縁石で形作られた停留所も用意されていた。


《会田肇》

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