“医療系MaaS”伊那市とモネの遠隔医療「モバイルクリニック」とは…伊那市長 白鳥孝氏[インタビュー]

伊那市長 白鳥孝氏
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長野県・伊那市とMONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)が行う医療系MaaS「遠隔医療によるモバイルクリニック」とは何か。またモビリティのみならず、産業や地域課題の解決手段で新しいテクノロジーの活用を進める伊那市とはどんな街なのだろうか。伊那市長の白鳥孝氏に聞いた。

移住者数が伸びる2つのアルプスに囲まれた街

白鳥氏:伊那市は長野県の南部に位置します。面積は667.93平方キロメートル、人口は67,851人(令和元年11月8日現在)です。南アルプスと中央アルプスの2つのアルプスに抱かれ、天竜川と三峰川の流れる自然豊かな街で、移住者が増えています。

---:私が初めて伊那市を訪ねたのが地域の固有種であるタカトオコヒガンザクラが美しいころでした。まだ雪化粧したアルプスと桜を観ながら澄んだ空気をお腹いっぱい吸いながら自転車に乗った感動は忘れ難い思い出です。登山、自転車、パラグライダー、ランニング、山を使ったスポーツや川でも水遊びがしたくなりました。

2017年の「田舎暮らしの本」(宝島社)で、「日本「住みたい田舎」ベストランキング!エリア別ランキング甲信地域」において、2年連続ベスト5に選出され、総合ランキングにおいては、長野県内3年連続第1位に選ばれていましたね。2018年、2019年も上位をキープされています。

東京のバスタ新宿から直通便が出ていて、3時間半で到着することができます。JR伊那市駅もありますね。

伊那市版スマートシティ「スーパーエコポリス」構想

白鳥氏:電気、精密、機械などの産業も集積しています。そこで伊那市版スマートシティといえる「スーパーエコポリス」構想を目指して、平成28年5月に設置したのが伊那市新産業技術推進協議会です。クボタ、KDDI、ゼンリン、沖電気工業、ソフトバンク、サイボウズ、平沢林産、都築木材、精密林業計測などに参画いただいています。

センシング、ディープラーニング、IoT、AI、ロボティクス、ドローン、VRなどを最新テクノロジー活用して、スマート農業、スマート林業、スマート工業、ドローン物流、インテリジェント交通、アメニティー定住、ICT教育を進めていて、特に遠隔合同授業やプログラミングの教育に力を入れています。

AIタクシー×ドローン物流×自動運転バス

---:インテリジェント交通プロジェクトのこれまでの取り組みを教えてください。

白鳥氏:昨年、国土交通省主導による、道の駅を拠点とした自動運転バスの長期の実証実験を行いましたが、これに合わせて、「空と陸」「物流と人流」の両面からアプローチした実証実験も実施しました。

道の駅を拠点にして、AIを使った最適運行・自動配車、ドローンデリバリー、自動運転バスの3つを組み合わせて、先進モビリティの「自動運転バス」×KDDIの「ドローン物流」× 未来シェアのシステムを使った「AIタクシー」の複合実証を行いました。

広大な土地の中に集落が点在していますので、自動車が運転できない人は、会いたい時に孫や友人に会えない、買い物や病院へ行けないなど、いろいろな制約を受けています。このような地域こそ新しいテクノロジーをうまく使っていく必要があります。

---:単体での実証実験は数多く耳にしましたが、このように複合的に組み合わせた実証実験は聞いたことがありません。

MONETとモバイルクリニック

白鳥氏:このような素地の下に進めているのが、荷物配送、出張販売、移動宿泊施設、移動診療所などのトヨタ自動車の次世代EV e-Pallette(イーパレット)のユースケースを打ち出し、サービスとしてのモビリティ(MaaS)を推進するMONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)との連携です。2019年5月に協定を結びました。

---:モバイルクリニックの実証事業とは?

白鳥氏:伊那市は長野県の中で3番目に広い面積を有しています。医師の数が足りていない上伊那医療圏では、高齢化が進む中山間地域の医療体制づくりが必要です。また慢性疾患による定期通院患者は、経過観察や投薬が主で、病院への移動や待ち時間が負担となっています。また、医師についても往診の際、遠方の患者を診察するのは負担が大きい状況といえるでしょう。こうしたことから、患者と医師の両面から持続可能な医療体系の構築が課題です。

実証事業では、専用の車両に看護師などが乗車し、患者の自宅などを訪問して、車両に装備してあるビデオ通話により、医師が遠隔地から患者を診察できるようにして、医師の指示に従って、看護師が患者の検査や可能な処置を行うことを想定しています。またドローンを活用した医薬品等の配送なども検討します。

モネの配車プラットフォームを活用し、複数の医師や看護師などと、車両の予約を連携させて、効率的なルートで患者の自宅などを訪問できるようなシステムを目指します。

2019年度からのフェーズ1ではオンライン診察を、2020年度からのフェーズ2では、薬機法(※)の改正を見込んでの薬剤師による遠隔服薬指導を、フェーズ3では医薬品配送などにも取り組んでいきます。
※旧・薬事法(正式名:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)
---:この実証事業はトヨタ・モビリティ基金の助成金を使って行うようですね。同じように困っている地域はたくさんあります。伊那でのモバイルクリニックが成功すれば、画期的なことですね。

《楠田悦子》

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