「ヤマハ愛」が支えるフィリピン二輪市場…現地オーナーがヤマハに求めるものは

フィリピンでヤマハオーナーへのインタビューが実現。写真は『Sniper』ファンを自称するエドワード
  • フィリピンでヤマハオーナーへのインタビューが実現。写真は『Sniper』ファンを自称するエドワード
  • フィリピンでヤマハオーナーへのインタビューが実現。それぞれのヤマハ愛を語った
  • ヤマハ Mio Aeroxオーナーのジョン
  • フィリピンで人気のスクーター、ヤマハ Mio i 125オーナーのジミリン
  • ヤマハNMAXを乗り継いでいるというレイモンド
  • 米空軍を退役後フィリピンに移住したというアーネストは、MT-10オーナー
  • フィリピンでヤマハオーナーへのインタビューが実現。それぞれのヤマハ愛を語った
  • フィリピン・マニラ中心部にあるヤマハ直営店「YZONE」。アジアの中でも最大規模の店舗だ

二輪の市場規模が世界で6位と、急成長を遂げているフィリピン。その中で大きく販売台数、シェアを伸ばすことに成功しているのがヤマハ発動機だ。ここ10年で販売台数は10倍超の54万台に、シェアは34%を超えた。人口の平均年齢が23歳と若いフィリピンで、ヤマハがいかにして人々の心を掴んできたのか。

5月某日、フィリピン・マニラの中心部にあるアジア最大級のヤマハ直営店「YZONE(ワイゾーン)」で、5名のヤマハオーナーにインタビューすることができた。「ヤマハ愛」あふれる彼らの言葉から、急成長する市場の秘密を探る。

フィリピン・マニラ中心部にあるヤマハ直営店「YZONE」。アジアの中でも最大規模の店舗だ
会場となったYZONEは、フラッグシップ直営店として2016年にオープン。最新のコーポレート・アイデンティティを採用した明るくクリーンな大型店舗には、ヤマハの最新モデルが所狭しと並べられている。おしゃれなカフェや接客スペース、「見える化」されたサービス工場など、若者を強く意識した店舗づくりが印象的だ。

フィリピン各都市にはさらに、「ライフスタイル大規模ワンストップ3Sショップ」とうたい、同コンセプトを継承した「REVZONE(レブゾーン)」店舗も展開。いずれも、いわゆる「雑多でアジア的なバイク屋」の印象は皆無で、先進国でもここまでブランディングされた店舗はそうないだろう。「お店が綺麗だから、ここでバイクを買うことにした」と話すユーザーも居た。イメージ戦略は着実に実をつけ始めているようだ。

そんなYZONEで今回インタビューに応じてくれた5名の簡単なプロフィールは以下の通り。

ジョン(34)所有バイク:ヤマハ Mio Aerox
ジミリン(30)同:ヤマハ Mio i 125
レイモンド(41)同:ヤマハ NMAX
エドワード(40)同:ヤマハ Sniper 150
アーネスト(58)同:ヤマハ MT-10

オーナーに聞いた、ヤマハを選んだ理由

フィリピンでヤマハオーナーへのインタビューが実現。それぞれのヤマハ愛を語った
まずは今、所有しているヤマハ車を選んだ理由を聞くと、ジョンは「ローンチされた当初から乗っています。自営業のため仕事で使うのですが、信頼性が高くて頑丈だというのが決め手でした。ヤマハはアフターサービスも充実しています」と話す。

『NMAX』を2台乗り継いでいるというレイモンドは、会場となったYZONEで購入したというが、その理由は「メーカー直営だから」と語る。「この店ならアフターサービスも充実してそうだと思って、選びました」(レイモンド)。YZONEをはじめとするヤマハの3Sショップでは、作業にかかる工賃や時間をすべてメニュー化している。作業を間近で見ることができるオープンさもあって、親しみやすさ、安心感を生んでいるのだろう。

「バイク旅が好き」という紅一点のジミリンは、ファンとの交流を挙げる。ヤマハが公認するクラブは49グループ、メンバー数は5万8000人にものぼるという。SNSやイベントを通じたファンとの交流を積極的におこなうのもヤマハならでは。「マニラからセブまでツーリングしたり。友達がたくさんできましたね」(ジミリン)。

元アメリカ空軍の軍人で、退役後にフィリピンに移住したというアーネストとヤマハの出会いは日本での駐在時だったという。「80年代に『セカ650』に出会ってから、ずっとヤマハのビッグバイク。数日前に『MT-10』を買ったばかりだよ。『TMAX』も持っているけど、1000cc以上のバイクが好きなんだ」と笑う。

日本車へのシフト

信号待ちをするジプニーやスクーター。中央にはヤマハ『MIO』も
フィリピンで二輪需要が高まっている理由のひとつに、都市部、特にマニラでの深刻な渋滞があるという。エドワードは、「タクシーやジープ(ジプニー。都市部を走る民間の乗合タクシー)で通勤していたんですが、バイクなら45分も短縮できました。さらに1日あたり100ペソ(約208円)の節約にもなるんです」と語る。

こうした背景の中、フィリピンでは年々日本車の需要が高まってきており、現在では70%ほどが日本車だという。現地生産を積極化しているとはいえ、ヤマハの人気スクーター『Mio i 125』でも約15万円から。ベースの年収が2万5000円ほどのフィリピンではかなりの高級品だ。それでも日本車、ヤマハ車を選ぶのはなぜか。

ジョンが「台湾製のスクーターに乗っていたけど、(製品としての)完成度がね…プラスチッキーで安っぽい。購入後のサポートもヤマハは全然違うんです」と話せば、レイモンドは「僕も台湾製のスクーターに乗っていました。エンジンのスムーズさや静かさがヤマハは良いですよね」と続ける。

ヤマハが明かしたフィリピンでのマスサーベイ調査によると、次期購入希望ブランドとしてヤマハを選ぶ層は49%にものぼるという(2位のホンダは26%)。さらに購入希望モデルを聞くと、トップ5がヤマハ車で上位3位は高付加価値車だったという。多少高額であっても、良いものを手に入れたいという欲求が日本車人気、ヤマハ人気を支えているようだ。

ヤマハの魅力は「燃費、デザイン、信頼性」

フィリピンで人気のスクーター、ヤマハ Mio i 125オーナーのジミリン
あらためて5人に、ヤマハの魅力を尋ねてみた。

ジョン「消費者のことをすごく理解してくれている。利益がなさそうなことでも尽くしてくれる」
ジミリン「燃費がいい。マゼンタのような新しい色が多いのも魅力。足つき性が良いのも、女性には嬉しい」
レイモンド「パーツが入手しやすいから、メンテナンスも安心できる」
エドワード「ワクワクさせるものがある。『Sniper』を出してくれたことに感謝している」
アーネスト「デザイン性、品質、信頼性。買う前と買った後で、印象が全く変わらない」

ジミリンが話した「新しい色」はヤマハが注力しているポイントでもある。主力のMioはマゼンタをはじめ、オレンジやイエローなど鮮やかな色がメインカラーだ。アジアの中でも特にフィリピンでは派手な色が好まれる傾向があるという。また燃費の良く扱いやすいAT車を積極投入しているのもヤマハの特徴だ。こうした需要にマッチした商品展開がユーザーの心を掴んでいるようだ。

フィリピンでのヤマハの主力モデル「Mio」。鮮やかなカラーが人気だ
「熱狂的なSpiperファン」と話すのはエドワード。Sniperは、スポーツバイク『YZF-R』シリーズの面影を感じさせるスポーティなスクーターで、先に紹介した次期購入希望モデルの中でもトップの人気車だ。エドワードは「Sniperが大好きで、モデルチェンジするごとに買い続けています。信頼性が高いのも魅力ですし、ヤマハはハンドリングやサスペンションがすごく良い。私はパーツの販売をおこなってるのですが、全てSniperと互換性を持たせています。ヤマハ好き、というよりはSniperというブランドに惚れ込んでいるんです」と満面の笑顔を浮かべる。

早く新しい商品を出してほしい!

フィリピンでヤマハオーナーへのインタビューが実現。それぞれのヤマハ愛を語った
最後にヤマハへの要望はあるか、と全員に尋ねてみた。すると殆どのメンバーが「早く新しい商品を出してほしい」と口を揃えた。レイモンドは、「フィリピン人はお金がないと言われるけど、新しくて良いものが出たら買うよ!」と力を込める。アーネストも「MT-10を買ったばかりだけど、上級モデルが出るのならば、いつでも購入する準備はできているよ」と余裕の表情だ。

ヤマハによると、近年では時差なくほぼすべてのモデルをフィリピンでも展開してるという。それでも「次はまだか!」「早く新型を!」と思わせるのは、ヤマハブランドへの信頼と期待がなせる技にほかならない。

マニラ市街地の往来を眺めていると、鮮やかなカラーのヤマハ車を多く見かける。ライダーの多くは20代前後の若者たちだ。最低賃金の低さ、貧富差の大きさなど社会的な課題や困難は少なくない。それでもバイクを、その中でもヤマハ車を憧れやステイタスとして捉え、月収の5~6倍以上するバイクをローンを組んで購入するのだという。

ヤマハ・モーター・フィリピン(YMPH)は、2023年に向けたビジョンとして「販売台数100万台、シェア40%、CSI No. 1」を掲げる。2020年7月には現地工場を拡張し、現在の40万台から80万台体制へと増産することを発表。また現在、ヤマハ専売店、併売店を合わせ2821店のディーラー網を、3000店強まで拡大することも明かしている。大杉亨YMPH社長は、「数字を追う、ということではなく質の高さを追求した結果としてシェアトップになっていれば嬉しい」と控えめだが、そう遠からずビジョンは現実のものとなるに違いない。

ヤマハ・モーター・フィリピン(YMPH)の生産ライン

取材協力 ヤマハ発動機

《宮崎壮人》

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