ZERO TO ONEが展開するライドシェアサービスnori-na(ノリーナ)は、レースやコンサートなどイベント会場への乗り合いマッチングをしてくれる。UberやLyftのように移動だけに注目したサービスと違い、ドライバーも同じ目的で移動する点がポイントだ。
どんなサービスでどんなビジネスモデルなのかをnori-na(ノリーナ)事業の責任者である、ZERO TO ONE Croooober事業部 石井大温氏にぶつけてみた。
石井氏は、10月30日開催の「月刊MaaSベンチャー」セミナーにも登壇します。
―ZERO TO ONEは、なぜ「ノリーナ」というサービスを始めたのでしょうか。きっかけを教えてください。
石井氏(以下同):ZERO TO ONEはもともとチューニングパーツショップのチェーンであるアップガレージの情報システム部門が独立してできた会社です。加盟店の在庫管理システムや通販サイトの構築、運用などを行っていました。事業を広げる中、ITを使って、クルマ好きを増やすようなサービスとして生まれたアイデアです。
アップガレージが、Super GT選手権に参戦しているので、レースファンどうしで集まって応援すると盛り上がるのではないか。また、乗り合いのマッチングがあれば、車を持っていない人にも利用してもらえます。共通の趣味や目的があれば知らない人どうしでもシェアのハードルは下がるし、車を持っていない人が車を買ってくれるようになるかもしれません。
―古い世代の人間だと、抵抗のある人はいそうですが、実際の利用者の反応はどうでしょうか。
たしかに、知らない人の車に乗るのはいやだという人はいると思いますが、ドライバー以外は車を持っていない人が多いので、若い人はあまり気にしないようです。当然、ドライバーのレビュー機能もあります。
レースだけでなく、音楽コンサート、花火大会など大きなイベント、スキー・スノボなどのレジャーで利用する人も増えています。
―現在、登録ドライバーは何人くらいいるのでしょうか。
全国で約1万人です。年代構成は10代から60代まで幅広いですが、30代は少ないですね。この年代は家族で子どもも小さいからだと思われます。独身の10代、20代、子どもが育った50代前後のドライバーが多いです。
―ノリーナは、ガソリン代や高速代をドライバー含めた割り勘をすることが前提となるようですが、サービスのマネタイズはどこで行うのですか。
基本はサービス利用の手数料です。現在は、ユーザーを増やす段階なので手数料無料としていますが、ドライバーが最終的に割り勘分を決済するときに手数料を徴収できます。とはいえ、ライドシェアの手数料だけでは難しい部分はあるので、イベントの運営側と提携して送客ビジネスも行っています。プロ野球のBCリーグでは、この送客モデルが形になっています。
アップガレージ(親会社)もノリーナは長期的な戦略ビジネスとしてとらえているので、趣味の仲間といっしょに車に乗ることで、車の楽しさを広く知ってもらったりレース好きを増やすための手段であり、Crooooberサイトのコンテンツのひとつとして捉えています。もちろん単体での収益化も考えているので、まずは登録ドライバーを増やすこと、利用者を増やすことをも考えています。
―具体的にはどんな施策を考えていますか。
イベントだけに依存すると、どうしても季節の波がでてしまうので、こちらから相乗りやお出かけを提案することを考えています。サイトや店舗を通じて移動のための場所や目的を提案、提供できると思います。
利用を増やすためには、近距離の移動、足としての移動サービスにも対応できます。現状のアプリはドライバーが使って楽しめる要素で設計しているので、掲示板形式だったり、地図上で他のドライバーとのコミュニケーションが楽しめる機能があったりしますが、アプリのUIなどを変えれば、同じ場所に移動しようとしている人を探せるようにできます。
―サービス開始にあたって国交省や業界団体などと相談や調整は難しかったのでしょうか。
実は、国交省への相談はサービスを開始してから行いました。事後でしたが、ノリーナの仕組みなら問題ないとの回答を得ています。ポイントは、ドライバーもその目的地に行くことと実費の割り勘(ドライバーが対価を得ていない)であることだったと思います。