全体に丸みを帯びた可愛らしいレトロデザイン。お笑い芸人の出川哲朗さんが、行き当たりばったり出会う人たちに充電させてもらいながら旅するテレビ番組に出ていた電動スクーターだ。ヤマハ『E-Vino(イービーノ)』、原付1種の登録なのでクルマの免許で乗れる。
普通のスクーターのようにキーを捻ってオンにすると電源が入り、さらにメーターのボタン(SELECTまたはMODEのいずれでも)を押すと走行可能に。メーター画面に「RUN」のマークが点灯するから、それでわかる。
加速はなかなかにして軽やかだが、アクセル全開での最高速度は原付1種の制限速度30km/hほど。物足りないので、MODEボタンを押して「パワーモード」に切り替えてみた。すると今度は40km/h弱(※)までスピードが上がり、スイスイ走る。
イービーノではさらにブースト機能なるものがあり、従来ならセルスターターボタンであるハンドル右のグリップ付け根のボタンを押すと一段と加速してくれる。ブーストボタンはアクセルを開けながら押し続けることができ、今度は50km/h弱まで速度が伸びた。
すばしっこく走れるブースト機能を使ってしまうと、もう“なし”では我慢できなくなってしまう。パワーモードならまだいいが、標準モードでは“とろすぎる”のだ。
しかしブースト機能で電池残量は一気に減ってしまうから、目的地までの距離との兼ね合いで使うか否か決めるしかない。バッテリー残量は5~100%までをメーター画面内で表示し、残量が少なくなると「カメ」マークが点灯し、ブースト機能は使えなくなる。
満充電1回での航続距離はカタログ値では29kmとなっているが、実際には20km強といったところ。シート下にあるリチウムイオンバッテリーは簡単に脱着でき、充電は家庭用100Vコンセントでオーケー。満充電までは3時間ほどだ。
乗ってみて気になるのは、加速性能はまずまずとして、航続距離が短いこと。ガソリンエンジンの原付スクーターを近距離の足として使うと「ガソリンいつ入れたっけ?」っていうぐらいに燃費がいい。乗るたびに充電しなければならないのは、やはり面倒だ。
にも関わらず、価格はガソリン車の『ビーノデラックス』(税抜き19万4000円)より高い(税抜き21万9000円)。航続距離が伸び、価格が下げられればとても魅力的なコミューターとなるだろう。
※30km/h以上での走行はクローズドされた場所でおこなった。
■5つ星評価
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★
足着き:★★★★★
オススメ度:★★★
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。