人工知能をもつドラレコの可能性とは…Nauto Japan 井田哲郎 代表【インタビュー】

自動運転の実現に向けたAI技術を読み解くため、業界のキーパーソンに各社の取り組みについて話を聞いた。第3回目となる今回は、Nauto Japan 日本代表の井田哲郎氏。

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Nauto Japan 日本代表の井田哲郎氏
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自動運転の実現に向けたAI技術を読み解くため、業界のキーパーソンに各社の取り組みについて話を聞いた。第3回目となる今回は、Nauto Japan 日本代表の井田哲郎氏。

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トヨタ・BMWが出資したドラレコベンチャー


---:まず会社の概要をお聞かせください。

井田:2015年3月に設立された会社で、日本のオフィスは今年の6月の開設です。我々のミッションステートメントは、安全なトランスポーテーションを実現するために、テクノロジーとデータのプラットフォームを実現します、というものです。

AIの技術開発が我々のコアですので、シリコンバレーでエンジニアを集めて、将来の自動運転に向けたアルゴリズムの開発を進めています。

---:御社の製品として、ドライブレコーダーが知られていますね。

井田:はい。将来の自動運転に向けて開発している要素技術を、今日(こんにち)のドライバーにも使ってもらおう、ということで、今すでにあるアルゴリズムをドライブレコーダーに載せることによって、お客さまに付加価値を提供できると考え、人工知能を搭載したドラレコの開発製造を手掛けています。

我々のデバイスは、リアルタイムにドライバーに注意喚起することができるので、単なる録画機能のドラレコより、安全な運行管理ができると考えています。

また、このドラレコを利用した運行管理サービスを提供しています。物を安全に効率的に動かすという意味で、運行管理のスキルを持った会社に使ってもらっています。ウェブアプリケーションとして提供しています。

これらのビジネスが、我々の主力の商品であるデータのプラットフォームに活かされています。データを集めるためには、新車だけではなく、既存の車にも載せられるデバイスである点が、スピード感とデータ量という意味では重要だと思っています。

ドラレコにGPUを搭載した意味


井田:デバイスの特徴としては、まず、どんな車にも後付け可能なことです。フロントガラスに張り付けるだけです。

---:センサーの種類はスマートフォンに近いですね。アンドロイドのスマートフォンを流用しているのでしょうか。

井田:実はアンドロイドのスマートフォンでやろうとして試したのですが、できなかったんです。2つのカメラで車内側と車外側を撮影しながら、予防安全機能を走らせて、LTEでデータをアップロードする、ということをスマートフォンでやると、信頼性に問題があります。お客さんに信頼性のあるサービスを出そうとすると、やはり専用のハードウェアが必要だという結論を我々は出しています。

---:カメラは2個ついているのですか?

井田:そうです。車内と車外のカメラです。もう一つの特徴は、GPUを積んでいるという点です。グラフィックプロセッシングをエッジ側でやるというのがユニークな点です。車内外の映像を分析して、リスクを検出して、危ないという判断をデバイス側でしてドライバーにアラートを出す。ここまでをクラウドを介さずにエッジサイド(デバイス)でやるというのが、すごく新しいコンセプトなんです。

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運行管理にブレイクスルーをもたらす


井田:もうひとつのサービスの柱として、運行管理サービスがあります。これには、ドライバーが運転中にスマートフォンを見るのを検知すると、アラートを出す機能が含まれます。スマートフォンのよそ見事故は、実態はもっと多いと我々は思っていて、というのも、運転中にスマートフォンを見ていて事故を起こしましたとは言わないじゃないですか。でもこういうデバイスによって実態が明らかになってくると思っています。

それとこのデバイスには顔認証の機能が付いています。既存のサービスでは、SDカードをドライバーごとに用意したり、いろいろな方法で個人と運転データを紐づけることをしていますが、顔認証で走行データとドライバーを紐づけることができます。

---:人と走行データをどう紐づけるか、既存の各社も苦労している点ですね。

井田:そうです。もう1つ、映像ベースのリスク管理ができるメリットがあります。今までは、急ブレーキを踏んだ、急加速した、という状態を検出してリスクを管理する手法でしたが、これだと、猫が飛び出してきたから急ブレーキを踏んだのか、スマートフォンを見ていて気付かなかったから急ブレーキを踏んだのか、分かりません。

映像と車両の挙動を組み合わせることで、この人は車間距離を取っていなくて、スマートフォンを見ていて急ブレーキを踏んだ、ということが分かるようになっています。

日本でのサービスインは


---:B2Bでデバイスをまとめて提供していくビジネスモデルが中心なのでしょうか。

井田:そうですね、デバイスの料金と、月額利用料をいただく形になります。月額には、サーバー利用料、LTEの通信費、運行管理のソフトウェアの使用料、本体のソフトウェアのアップデートが全部含まれています。

---:日本における当面のミッションは、日本の企業に対してシステムをローカライズして提供する、ということでしょうか。

井田:まずはそうです。運行管理のウェブアプリケーションを日本語化し、デバイスも日本のLTEモジュールを載せて、日本のお客さんの運転に合わせたアルゴリズムにしなければなりません。ローカライズするのにやることはあります。

---:このデバイスを付けると自動車保険が安くなる、PAYD認定デバイスのようなモデルはあるのでしょうか?

井田:アメリカではアトラスという保険会社と組んで、リスクの高いお客さまにこのデバイスを付ける、ということをやっていますが、保険料をどう調整するか、ということはこれからですね。

---: いまはB2Bでのビジネス展開ですが、B2Cへの展開はあるんですか?

井田:今のところはないですが、将来的には検討したいですね。B2Cには難しいところもあって、コンシューマーのニーズだと安価なドラレコで十分だったり、顔認証などB2Cでは不要な機能もありますし、我々は運行管理の方に絞って開発をしている部分があるので、コンシューマーの方にはオーバーステップになると思います。



自動車メーカーが出資した理由


---:出資についてお聞きします。ソフトバンクが出資し、その前にはトヨタとBMWの出資がありますね。自動車メーカーはどの点を評価したのでしょうか?

井田:やはりデータとアルゴリズムの両方だと思いますね。我々の作っているリスク検出用のアルゴリズムと、あとはデバイスが集めるデータという2点が、自動車メーカーに大きな興味を持っていただいているところだと思います。

---:ドライバーの状態監視は法制化の動きがありますね。

井田:アメリカでも、下請けの小さな物流会社に配送をアウトソースしている大きな物流会社では、「うちの仕事をしたかったらインカメラを付けなさい」ということを条件にしている会社が出て来ていますね。

---:インカメラは顔認証に使うんですか?

井田:顔認証と脇見の検出を両方持っているところは無いですね。一部、ルールベースの人工知能を使ってる会社はありますが、当社のようにニューラルネットワークをエッジで回してるという例は無いですね。

---:ということは、インカメラ側の付加価値が高いんですね。アウトカメラの付加価値はありますか?

井田:インカメラとアウトカメラの組み合わせで価値が出せると考えています。アウトカメラの情報に意味が生まれるのは、外の状況に対してドライバーがどういうアクションを取ったのかが分かるからです。

我々は、車の挙動と外の状況と内のドライバーがすべてコンテクスト、意味がある内容になって、それがデータベース化されてこそ、何があって、運転手がどういう動きをしました、ここまでがワンセットだと考えています。

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《佐藤耕一》

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