【UD クオン 新型】控えめADASは現場指向の現れ

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新型クオン 発表試乗会
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  • トラクターは参考展示。近いうちに新型か
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  • 代表取締役会長 ヨアヒム・ローゼンバーグ氏
  • UDトラックスは創業者安達堅造からの現場主義
  • 代表取締役社長 村上吉弘氏
UDトラックスは11日、新型『クオン』を報道陣向けにアンベールイベントと試乗会を開催した。新型のポイントはESCOT-VI、ストレートシフト、ふらつき注意喚起、ディスクブレーキ採用、テレマティクスサービスの強化、そして機械式コンプレッサーの冷凍ウィング車の復活も発表された。

新型クオンは運動性能、燃費・環境性能、安全性、生産性、稼働率の5つの基本性能に注力して、改善や新技術の投入が行われた(代表取締役社長 村上吉弘氏)という。発表されたのはカーゴタイプ(CD/CG)、ダンプトラック(CW)の2種。カーゴタイプには6×2のCDと8×4(前輪2軸)のCWが設定される。なお、トラクタータイプの新型も予定があるという。

それぞれのポイントについて、当日行われた試乗インプレッションも含めて紹介する。

●運動性能

まず、同社の自動トランスミッションであるESCOTがファイブからシックスへと進化した。ESCOT-VIでは、クラッチ圧の強化が行われ、変速スピードが向上した。よりスムースな変速、細かい制御が可能となる。また、運転席のシフトレバーがHパターンからIパターンのストレート方式に変わった。

新しいセレクトレバーはR、N、D、Mの順に配置され、P(パーキング)ポジションはなく、従来型のパーキングレバーで操作する。Mはマニュアルモードだが、Dポジションでもレバー横の+、-ボタンで任意のシフトアップ・ダウンが可能だ。ストレートシフトは他社トラックにも増えているので、操作にとくに違和感はないだろう。しかし、どうせなら、マニュアルモードを乗用車と同様な、横に倒してレバーによるシーケンシャルシフトにしてくれてもよかったかもしれない。

なぜそう思ったかというと、新型クオンでは、大型車には珍しいブレーキがディスクブレーキになっている。試乗では十分なテストはできなかったが、ブレーキフィーリングがドラムブレーキに比べてリニアで、乗用車に近い感覚だ。シフトレバーもそこまでこだわってほしいと思う。が、これは好みの問題であり、メーカーとしてはESCOTの制御に任せて、シフト操作は(いまやむしろ燃費が悪くなるので)考えなくてもよいというポリシーだろう。

搭載されるGH11エンジンは最高出力が360Hp、390Hp、420Hpの3タイプ、最大トルクが1750kgm(1900Nm)と従来モデルより馬力、トルクともにアップしている。試乗車は総重量20トンの状態。路面は雨のためヘビーウェットだったが、ESCOT-VIの制御と相まって、加速はなめらかだ。シフトアップのショックもほとんどない。

●燃費・環境性能

燃費や環境性能についても改善が行われている。平成28年度排出ガス規制のクリアは当然として、平成27年度重量車燃費基準も全車種(CD、CG、CW)+5%で達成している。エンジンはインジェクションがユニットインジェクターにコモンレール方式を組み合わせた形になっており、ピストン上部の形状を最適化(ウェーブヘッド)することで、NOx削減や燃費性能を実現している。

大型車でもエンジンのダウンサイジングの動きがある。燃費向上にはこの手法もあったが、新型クオンでは、ESCOT-VIやエンジンの見直しで十分な環境性能を達成できたため、従来どおり11リッターのエンジンのままとした。

また、ESCOT-VIから搭載された先読み機能「フォアトラック」によって、過去に走行した道路を記憶して最適なアクセル制御、シフト制御が可能になっている。これも燃料消費の無駄をなくす技術だ。フォアトラックは、地図情報での先読みではなく、GPSベースの走行履歴で制御を行う。初めての道では機能しないが、地図情報の更新の問題がない。

●安全性・生産性・稼働率

大型トラックにもADAS機能が標準的になっている。新型クオンも従来からのミリ波レーダーとカメラによる衝突被害軽減ブレーキ(トラフィックアイブレーキ)の他、ふらつきを検知してドライバーに注意を促すドライバーアラートサポートが新規に追加された。アダプティブクルーズコントロールの採用済みだが、渋滞時などで前車に追従した自動発進は対応されなかった。

安全性向上のポイントとして、他にもヘッドライトのロービームをLED化がある。色温度は4000Kから5000Kまで向上し、夜間の視認性をアップさせた。ディスクブレーキは耐フェード性に優れ、安定したブレーキ性能が期待できるが、さらにブレーキブレンディングの技術によって、走行状況に応じてフットブレーキに排気ブレーキやブレーキトルク介入を行うことで、理想のブレーキングを実現する。

ディスクブレーキの採用は、運動性能や安全性の向上以外に、全体の軽量化に大きく貢献しているという。全体の軽量化はフレーム構造やアクスルなどの見直しなど総合的な結果だが、積載量は最大で200kg増えている。フレームは上部をリベットレスにすることで、架装の自由度を上げている。微速後退の制御も改善し、エアサスはストロークを延長させ制御域を広げることでさまざまな高さのプラットフォームでの作業効率を向上させる。

テレマティクス機能(UDインフォメーションサービス)も強化された。車載コンピュータと直結した専用ゲートウェイがモバイルネットワークと通信し、UDトラックスのクラウドサーバーに車両データを送ることができる。ディーラーはその情報にアクセスすることで、最適な点検やメンテナンスに役立てることができる。

これは、ロードサービスにも活用され、路上で故障やトラブルが起きた場合も、故障車両の診断データをディーラーが解析することで、必要な部品や機材を手配したレスキューを現場に派遣することができる。

他にもホイールのハブベアリングを刷新し、注油メンテナンスの必要をなくしたり、純正部品の品質管理や見直しによって、稼働率向上を目指す。

●あくまで現場目線の新型開発

新型クオンは、「かつてない規模で設備や人材に投資した(代表取締役会長 ヨアヒム・ローゼンバーグ氏)」というUDトラックスが、とくに日本市場を意識して開発したという。他にもセンターパネルに5インチマルチファンクションディスプレイを設置し、ESCOT-VIのモードや各種走行状態を見やすくしたり、コンソールのスイッチ類の配置を見直したり、LEDヘッドライトなどのエクステリアの見直しなど、改良点は多岐にわたる。

半面、競合他社と比較するとADAS系の技術投入が控えめな印象を受ける。三菱ふそうは左側の赤外線センサーによる巻き込み警報システムを搭載し、日野は歩行者検知も可能な自動ブレーキを謳っている。これらの技術は、コモディティ化が進み技術的な理由で実装できないレベルのものではない。1995年から他社に先駆けて自動トランスミッション(ESCOTシリーズ)を実用化したUDトラックスにできないはずがない。

試乗でも、新型クオンの自動変速のスムースさやタイミングの違和感のなさは、他社トラックの自動変速制御と比較するとよくわかる。自動制御で過度な介入をしないのは同社のポリシーだろう。それは、ローゼンバーグ氏が発表会のスピーチで述べた「現場スピリット」の現れかもしれない。生産性や稼働率など事業者視線の機能だけでなく、現場のドライバーの指向、目線に沿った開発の結果ではないだろうか。
《中尾真二》

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