【中田徹の沸騰アジア】トヨタ・スズキ vs VW・タタ、インド攻防戦は新展開へ

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インド政府はトヨタとスズキの提携を歓迎。VW、タタはこれに続き連携を発表。インド市場は群雄割拠の時代へ(トヨタ豊田章男社長とスズキ鈴木修社長)
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「豊田章男社長と鈴木修会長との素晴らしい会談(a wonderful meeting)の場を持った」インドのモディ首相がツイッターでそうつぶやいたのは2017年3月9日午後11時18分のこと。その翌日、タタ・モーターズとフォルクスワーゲン(VW)グループは、共同開発を軸とした事業提携を目指すと発表した。高い成長性が期待されるインド乗用車市場を巡って、トヨタ・スズキ連合vs VW・タタ陣営の構図が意識される展開となっている。

◆タタとVWは低価格車の共同開発を視野

タタとVWグループは3月10日、共同開発プロジェクトを軸とする長期戦略提携に向けて覚書(MOU)に署名した。両者は、コスト競争力重視の“エコノミーセグメント”の製品開発に主眼を置いており、製品ポートフォリオの拡充を目指す。VWグループ側は、チェコ子会社のシュコダが主導する形で今後数か月かけて提携範囲を協議・具体化するとの考えを示す。一方で、タタは2019年から協業ベースの新製品をインド市場に投入すると明言している。

インド最大の財閥の中心企業であるタタ。話題をさらった超低価格車『ナノ』に続く新製品の開発が遅れ、またグローバルプレーヤーの攻勢に押され、かつて10%を超えていた乗用車市場シェアを5%程度にまで減らしている。ブランド戦略の軌道修正、製品ラインアップの更新、内外装デザインの改善などに取り組むものの、挽回に至っていない。乗用車事業の立て直しで苦戦するタタの場合、VWグループの持つ先進技術を活用できれば、製品競争力のてこ入れを期待できる。

一方、長期経営戦略「TOGETHER-Strategy 2025」を掲げるVWグループ。自動車販売台数で世界首位に立ったが、中国を除くアジア地域では存在感が薄い。VWブランドのインドでの自動車販売台数は近年5万台を下回り、乗用車市場シェアは1%台にとどまる。2025年を見据えた成長戦略を描くなかでインド市場攻略は重要な命題のひとつであり、現状打開のためにもタタから低コスト化のノウハウなどを吸収したい考えだ。

■トヨタとスズキの提携の行方?

インド乗用車市場でシェア45%を誇るスズキ。「オートギアシフト(AGS)」と呼ぶ変速機や「SHVS」と呼ぶマイルドハイブリッドシステムなどが好調で、独走状態を維持している。また、2015年に導入したプレミアムモデルを手掛ける新たな販売チャネル「ネクサ(NEXA)」により、製品ラインアップの重層化を図っている。多様なニーズに対応するための体制作りが着実に進んでいる。

インドでレクサスブランドを導入するトヨタ。『カムリハイブリッド』や『フォーチュナー』といったプレミアム分野では存在感を発揮するが、主戦場の小型車では苦戦している。自前開発したエントリーカー『エティオス』を2020年前後に販売終了する予定で、次世代の小型車をどのように賄うのかが課題だ。トヨタグループの小型車開発を担うダイハツについては、東南アジア市場を優先する方針で、インド市場への参入のめどは立っていない。一方、3月9日の豊田社長と鈴木会長、モディ首相の会談では将来に向けた技術開発などが議論されており、トヨタとスズキのインドでの協業を匂わす。

◆2020年前後から市場競争は新展開へ

VWグループとタタの提携は、補完関係の点で相性が良さそうだ。タタが持つ低コスト化のノウハウとサプライチェーンがVWグループのコスト競争力向上につながる可能性があり、VWグループの強みである先進技術がタタの製品力底上げにつながる可能性がある。協業による新型車は2019年から順次発売される見通しで、タタグループの企業力とVWグループのブランド力を考慮すれば、シェア挽回も現実的だ。

一方、インド首相府の3月9日の発表に沿えば、技術力と生産面で世界をリードするトヨタと小型車生産に強みを持つスズキの提携は、インド自動車産業に新しい技術の導入をもたらすことになる。また、「メーク・イン・インディア(Make in India)」のスローガンを掲げるインド政府は、トヨタとスズキの提携が新規の雇用創出につながると考えるだけでなく、新技術を使った乗用車の輸出を期待している。

VWとスズキの提携解消から1年半でまとまった2つの新たな提携関係。群雄割拠のインド乗用車市場では、ルノーの躍進、ホンダの浮沈、フォードの停滞、GMの凋落など、激しい市場競争が続くが、主要プレーヤーが顔を揃える2大陣営の形成により、シェア攻防戦は新たな展開に移りそうだ。
《中田徹》

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