自動運転が過疎地を救う? ソフトバンクが描く路線バスの未来とは

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取材時の実証実験はエスティマベースの車両が使われていた。愛知県の実証実験ではほかにプリウスベースの車両も使用している。 《撮影 山田正昭》
  • 取材時の実証実験はエスティマベースの車両が使われていた。愛知県の実証実験ではほかにプリウスベースの車両も使用している。 《撮影 山田正昭》
  • 運転席に人がいるとはいえ、自動走行車の公道走行はもはや珍しいものでは無くなっている。 《撮影 山田正昭》
  • この車両のセカンドシート正面にはディスプレイがある。右は自動走行システムのモニター用で、左はSBドライブの開発した「cocoro Drive」が稼働しているiPadだ。 《撮影 山田正昭》
  • 「cocoro Drive」は音声認識と合成音声で会話をするAI。シンプルな画面は感情表現も可能となっている。SBドライブが自動運転に関わる足がかりになるアプリといえる。 《撮影 山田正昭》

ソフトバンクが自動運転の分野に進出していることを知っている人も多いだろう。2016年4月に自動運転技術の導入・運用に関するコンサルティングなどを主な事業とする新会社SBドライブ(エスビードライブ)を設立した。現在、すでに自動運転車の実証実験に参加しノウハウの蓄積を行っているが、実は意外な形での自動運転車の実用化を目指している。

記者が取材したのは、愛知県が進める自動運転の実証実験。アイサンテクノロジーが受託し、名古屋大学、アイシン・エイ・ダブリュ、ZMPなどが連携して愛知県の各地で自動走行車を走らせ、各種データを収集しているものだ。しかし、取材のオファーを送ってきたのは前述の企業のいずれでも無く、SBドライブだった。その内容は、SBドライブは、無人タクシーを疑似体験できるアプリ「cocoro Drive」をプロジェクトに提供している。

「cocoro Drive」については別途レポートする。ここでは、取材時に広報(SBドライブの広報では無く、ソフトバンク株式会社の広報室が担当している)から聞いた、SBドライブの描く自動運転車の事業計画を紹介しよう。同社がビジネスチャンスとして目を付けたのは、都市部ではなく地方。それも過疎地など、既存の交通システムが赤字で存続が危ぶまれているような地域だ。こういったエリアで自動運転による無人の路線バスを走らせれば、劇的な人件費の節約が可能となり、赤字の圧縮もしくは解消、廃線の危機からの脱出が可能となる。

このアイディアはソフトバンクグループのビジネスチャンスであると同時に、交通機関を確保したい地域の社会貢献にもなる。日本中の旅客輸送業者が、都市部のわずかな黒字路線で膨大な地方路線の赤字を埋めているのは周知の事実。加えてバスの運転手は慢性的に不足している。自動運転バスが実用化されれば飛びつきたいバス会社は多いだろう。

現在のところ、SBドライブは「cocoro Drive」を通じて自動運転車の実証実験に参加しているが、このアプリは自動運転車のシステムとは関係のない付加的な要素にすぎない。つまり、自動運転車の開発に関しては、スタート地点に立ったばかりだといえる。しかし、事業計画は非常にアグレッシブだ。2018~2019年に自動運転の路線バスの実証実験を開始し、2021年に実用化、つまり営業運行を開始したいという。路線バスという限定的な条件ながら、5年後には自動運転が実用化されるというのだ。

SBドライブはソフトウエアなどのシステム構築やプランニングを行う会社であり、直接的に自動運転車を開発、製造するわけでは無い。しかし、決まったコースだけを走る路線バスは、自動運転の難度が低いので、適切なパートナーと組めば、技術的な問題は少ないだろう。自動運転の実用化は意外と早そうだ。

《山田正昭》

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