【日産 GT-R 2017モデル 試乗】開発陣の思いでこうも変化するものか…桂伸一

試乗記 国産車
日産 GT-R 2017モデル
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日本が誇る300km/hオーバーカーを速度無制限のアウトバーンで試して来た!! それが日産『GT-R』の新生2017年モデルだ。

ワールド試乗会が行われたのはF1ベルギーのGPコース、スパ・フランコルシャン。まずはドイツ・デュッセルドルフ空港でクルマを受け取りアウトバーンからカントリーロードと市街地を抜けてスパに向かう。

毎年進化するのがGT-Rのお約束だが、今回はより大規模で見た目から違う。ボディ全体がシェイプされたのだが、どこが? というとフロントではボンネット、バンパーとリップスポイラーがまったく別ものに。空力の関係でCピラーの折れ線が消えたリアはフェンダーがまるまる違い、同様に走行風の流れを変えるためサイドシルカバーも変更。リアバンパーのデザインもニスモに準じる。一見してスッと贅肉が削がれた感じだが、そのとおり。大量に空気を導入するグリルとそれによる空力の変化、ドラッグとダウンフォースの関係を他の部分でバランスさせる。まさにレーシングマシンのような空力調整を行うところがGT-Rらしく徹底していていい。

新旧を並べると、旧型(現行)が丸みを帯びてホンワカ優しい印象に対して新型はフロント回りが特に引き締まった!! そのカタチの違いだけでも触手が延びるのは理解できる。そのくらい素直にカッコいい。だいたい’17モデルといえば、デビューが2007年だから10年になる。10年間世界の一線級でいられるスポーツカー、その事実だけでも凄いが、さらに進化した事に驚く。


◆アッという間の250km/h !! でも涼しい顔で会話が弾む

エンジンチューンの効果もあって、パワーとトルクは570ps/637Nmに。いきなりアウトバーンから始まる試乗は、まず低回転からミッションやペラシャフトを含む回転ムラのあるメカニカルノイズが減り、まったく気にならない普通のレベルから加速体制に入る。V6のエキゾーストサウンドは低速域では滑らかで静粛性も高くなった。それはチタン製マフラー内のバルブが音圧を変え、遮音効果、スピーカーからのノイズの逆位相による音消し効果もさらに高めた結果。

エンジン特性は相変わらず、低回転からトルクに溢れ、鋭いレスポンスの持ち主。リミットまで回す必要はなくDレンジは自動アップだから任せて安心。マニュアル操作では6000rpm過ぎでパドルを引く方が効率良く、現実速い。パドルは従来のステアリングポスト固定からステアリング裏に移る。旋回中でも手を離さずにシフト操作が可能。ここは賛否起るだろうが、要は自分のクルマとして慣れればいいだけの話で、問題はない。

ロケットダッシュでアウトバーンの速い流れに流入すると、即左の追い越しレーンに移る。5000rpm以上、高周波のV6サウンドをデュアルクラッチ・ミッションやペラシャフトがより高い精度で回転、変速、ギヤ鳴りもクラッチミートのショックもない右肩上がりに一直線で、アッという間の250km/h !!

フル加速中も高速直進性にも修正舵の必要がなくステアリングを保舵しているだけ。と書くと従来型(’14モデル以前)オーナーは「嘘」と身を乗り出すのでは? 轍を含む路面の荒れからの影響を受けない直進安定性は、例えば200km/hで手に汗握った従来に対して、300km/h…少なくとも250km/hは確実に涼しい顔でBGMとともに隣人と会話が弾む、そんな感覚。

話が300km/hオーバーに進まないのは、道路状況のため。250km/hの速度で疾走しているのに、遥か彼方先で我々の追い越しレーンに飛び出してくる輩がいる。しかし“自分がGT-Rの進路を塞いだ”とミラー越しに確認した瞬間、飛び退くように元のレーンに戻り道を空けてくれる。追い越しレーンで我をはる我が国とは高速走行のマナーの違いにがく然とする。

ブレーキングで速度を落とし再び加速で呆気なく250km/hを越えるが、また先行車に追いつく。進路を譲ってくれる事は判っているが、安全に踏めない状況であえて踏む必要はないので、アウトバーンでは超高速の安定性を確認できたのでよしとする。加速中の前上がり、後ろ下がりの姿勢や、空力による前後の姿勢変化が少ない事も確認でき、適度に重いステアリングの操舵感の安定性も理解できた。


◆R32時代のGT-R愛が蘇った

山間にあるスパ・フランコルシャンに到着すると曇天。今すぐにでもコースインしたいのだが、占有走行は夕方から。全長7km高低差104mはニュルブルクリンクに似ている。という事は天候の急変も!? 案の定ヘルメットを被り試乗開始となった途端、恨めしい雨がコース全面を濡らす。気温も低いため、この後各国のジャーナリストが乗り変わり試乗するが、タイヤ温度を手で測ると冷たいまま。それはタイヤが本来持つグリップ力を発揮しない事を意味する。

コーナリングそのものは舵角と切り込む速度で狙ったラインにノーズを向けることはいたって容易。中速~高速域は前後の駆動配分をコントロールする4WDの威力と、リアのLSD、空力効果も手伝って、4輪で路面を捉えた安定姿勢で230km/hのストレートからコーナーを蹴って行く。

ただしコーナーに進入しながらのブレーキング、いわゆる旋回ブレーキングで姿勢が前傾した際のリアの動き、シケインで荷重移動した際のリアの接地の抜けは、オーバーステアになりやすく気になるところ。

路面に染み込んだ油脂やタイヤカスが浮き上がる極めて滑りやすい状況も関係は深い。ただ開発陣はその変化の事は理解していて、要改善ポイントと言う認識もある。

ドライ路面でのコーナリング性能の詳細は日本に持ち越し、というかそこは初代がデビューした頃から人工的ではあるが、曲げることに造作はない。

’14モデルから開発責任者が現在の田村宏志氏に変ってから、クルマとは開発陣の思いでこうも変化する、と言う事を改めて教えられる。何よりもクルマを操る「ヒトと対話しながら操縦する、血の通ったクルマとの関係」。’17 GT-Rを前に、かつてGT-Rでレース活動を行い、2度もチャンピオンに輝いたR32時代のGT-R愛が蘇った。親近感が持てるGT-R、と変革した事は間違いない。


桂 伸一|モータージャーナリスト/レーシングドライバー
1982年より自動車雑誌編集部にてレポーター活動を開始。幼少期から憧れだったレース活動を編集部時代に開始、「走れて」「書ける」はもちろんのこと、 読者目線で見た誰にでも判りやすいレポートを心掛けている。レーサーとしての活動は自動車開発の聖地、ニュルブルクリンク24時間レースにアストンマー ティン・ワークスから参戦。08年クラス優勝、09年クラス2位。11年クラス5位、13年は世界初の水素/ガソリンハイブリッドでクラス優勝。15年は、限定100台のGT12で出場するも初のリタイア。と、年一レーサー業も続行中。
《桂伸一》

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