【ダイハツ キャスト 試乗】ハスラー の刺客となり得るか、SUVテイストの「アクティバ」…中村孝仁

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ダイハツ キャスト アクティバ
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大ヒットしたスズキ『ハスラー』に対抗するモデルを持たなかったダイハツが仕立て上げたモデルが、『キャスト アクティバ』である。メーカーはかなり前から開発を進めていたというが、急遽感が否めないのは僕だけだろうか。

後出しじゃんけんは、本来強みがあるはずである。ハスラーの市場を徹底的にリサーチして、痒い所に手が届くクルマに仕立て上げる。簡単に言えばそうしたことが可能なはずであった。ご存知の通り、ハスラーはベースが『ワゴンR』、一方のキャストは『ムーブ』だから、土俵に上がる前はほぼ同じ条件でスタートしたはずである。

冒頭、メーカーであるダイハツは、ハスラーが出たから急遽仕立てたのではなく、以前から温めていたコンセプトであると話していたが、個人的に思うことはそれは『キャスト スタイル』の方であって、アクティバは後から付け足された派生モデルではないかと考えてしまうのである。因みにこのキャスト、アクティバとスタイルの他に、東京モーターショーでデビューするスポーツと3モデルが用意される。つまり一粒で三度美味しいモデルなのである。

軽自動車だから当然と言えば当然だが、そのディメンションは基本的に同じ。ハスラー風のクロスオーバーとするために地上高を上げているが、その高さもFWD180mm、4WD175mmで一致。グリップサポート制御(ハスラーではグリップコントロール)、ダウンヒルアシストコントロール(ハスラーではヒルディセントコントロール)といった滑りやすい路面での制御系も名前こそ違えど、機能は一緒である。だから、成り立ちは限りなく近い。

というわけで、違いをつけるとしたら性能やスタイルなど限られた部分でしかないわけなのだが、性能面でも、ターボおよびノンターボのエンジンが用意されるだけで、マイルドハイブリッド系(スズキはSエネチャージ)があるわけでもないから差別のしようがないし、スタイルに至っては、ゆるキャラ系でブレークしたハスラーの個性に対して、正直キャストにはこれといった個性がないために、打ち出せる訴求ポイントがないというのが現実である。

しかも乗ってみて実感できたことは、ダイハツのターボモデルがスズキのターボエンジンと比べるとかなり高回転仕様であること。ターボとノンターボを比べてみると、確かに違いは実感できるのだが、加速はいわゆる後伸びするタイプで、肝心な常用域のパンチ力に欠ける印象が強い。だから、高速ならばいざ知らず、精々50km/h程度までしか使えない市街地だと、ターボの強みを発揮することが難しくなる。

特にノンターボ車にDアシストと呼ばれるパフォーマンスモードがついているから、ノンターボでも市街地走行で痛痒を感じない。勿論ターボ車にも付いているのだが、常にそれを使わないとノンターボとの明確な差を感じないのではあまり意味がないような気がするわけだ。因みに最大トルクはハスラーの場合3000rpmで発揮されるが、キャストでは3200rpm、これがノンターボだとハスラーの4000rpmに対し、キャストは5200rpmと明確な差となる。

足回りは、本来地上高の高いアクティバは30mmも低いスタイルと比較して不利だと思われがちなのだが、タイヤのハイトとサスペンションの関係か、実はアクティバの方がソフトで快適な乗り心地を持つうえ、運動性能の差もさほど感じさせない。ロール自体の大きさはいかんともしがたいが、決して不安を感じるようなものではないし、限界付近の安定性も非常に高いから安心して飛ばしても大丈夫…、と言って制限は守るように…(説得力無いな)。

キャストが、ハスラーに対して優っていると思えるのはその質感や作り込みの部分だろう。少なくとも見た目はだいぶ上質だし、使っている素材にも注力している。とりわけダイハツは樹脂系素材をふんだんに使い、サイドパネルやフェンダー、それにテールゲートはすべて樹脂である。またルーフはラッピングされていて、独特な雰囲気を作り出しているのが特徴である。将来的にこれを駆使すれば簡単にカラー変更などが可能となりそうだ。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★
フットワーク ★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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