このようにモータリゼーション導入期に近づいているベトナムにおいて、中古車ウェブサイトを活用し中古車の売買を取り持つ専業者やブローカーが少しずつ増えてきた。中古車販売店と一般消費者の取り引きであるB to C(Business to Consumer)、また一般消費者間で行われる取り引きであるC to C(Consumer to Consumer)、主としてこの2種類の取り引き形態がある。
ウェブサイトの規模を、中古車のサイト掲載台数ということでみれば、ベトナムの中古車ウェブサイトMuabanが9万台と最も多い。新車販売台数が10万台前後として考えると9万台というのは大きな台数だ。Muabanはベトナムで最も大きなC to Cの売買情報が載っているサイトである。売却済みになっても載せたままになっている中古車、また同じ車両がダブって掲載されている可能性もある。そのため正確な台数は把握できない。
更に、このウェブサイトが中古車販売店やブローカーのための仲介ビジネス(コミッション)になっていることも注目すべき点だ。つまり、公平な競争が阻害される恐れがある。形式上はB to Cを取っているが、実態はほぼC to C サイトである可能性が高い。B to Cの場合、運営車(中古車販売店)は多額の運転資金を必要とする。1度中古車を旧所有者から買い取り、それを新しい所有者に販売すると相当な資金が寝ることになる。それだけの資金を賄えるだけの中古車販売店はベトナムにはなかなか存在しない。
更に、C to Cでの利点は10%の取得税を免れることができることだ。となれば、同じ中古車を販売する場合、まじめに販売をしている中古車販売店は価格競争力で勝ち目がない。税金の10%分高い価格設定になってしまうためである。このようなウェブサイトの活用方法がベトナムで主流になってきている。仲介ビジネスを行う中古車販売店やブローカーのみが、売り手と買い手の情報の非対称性を利用して利益を得るいびつな市場になりかねない。
仲介ビジネスが悪いというわけではない。しかし、本当にC to Cの場にウェブサイトを利用した仲介が必要なのだろうか?購入者にとっても便益があるような透明な中古車市場を創(つく)り上げていくことが、新車を含めた自動車市場の拡大につながっていくものと今回のベトナム訪問で改めて考えた。