2013年に現行モデルが誕生したフォード『クーガ』にマイナーチェンジが実施された。
今回のマイナーチェンジで最大の話題といえるのは、「タイタニウム」と「トレンド」というふたつのグレードで、各々に異なるエンジンを採用してきたこと。特に注目されるのは、トレンドに搭載される1.5リットル仕様の直列4気筒エコブースト。
182psの最高出力と240Nmの最大トルクという十分なスペックを実現しながら、これまでの2リットル仕様に対して約34%も燃費性能を向上させていることは、実際のセールスでは相当な説得力を生み出すに違いない。
今回は、242ps&345Nmを発揮する2リットル仕様の直列4気筒エコブーストを搭載するタイタニウムと、このトレンドを同時に試乗することができたが、日常的な使用環境においては、トレンドの走りにもかなりの余裕がある。タイタニウムではさらに、実用域でのパワー&トルクの余裕が生み出されているから、それが結果的にラグジュアリーな走りを演出する。
コンパクトSUVとしての使い勝手やコストパフォーマンスを重視するならトレンド。サルーンモデルのような高級感や快適性を求めたいのならばタイタニウムというのが、装備差も含めて考えた時の選択となるだろう。
それにしても最近のフォード車は、どれも走りがスポーティだ。この新型クーガももちろん例外ではなく、SUVでありながらも、重心の高さをハンデと感じさせない、実に魅力的なコーナリングを見せる。
走行状況に応じて前後で0:100から100:0まで、トルク配分を自動的に最適化するインテリジェントAWDを採用していること、そしてさらに前輪にトルクベクタリングコントロールを組み合わせていることで、圧倒的なスタビリティとトラクション性能が確保されているのだ。
SUVとしての機能性も、個人的には十分に満足できるものだった。ラゲッジルーム容量は、後席を使用した状態でも406リットルで、それを最大で1603リットルにまで拡大することが可能。ハードとしてはもちろんだが、ソフトとしてもこのSUVには抜群のユーティリティが備わっている。特にソフトとしてのユーティリティ。つまり新型クーガを使ったら何ができるのかを考えるのは、とても楽しい時間だ。
もちろん新型クーガにもウィークポイントはある。それはこれが日本仕様であると主張するに十分な装備内容、表現を変えるのならば日本仕様としてのローカライズが不十分であること。
ナビゲーションシステムも用意されず、またフォード自慢の車載情報システムである「SYNC」も、日本語化に未対応であるばかりか、実質的にはハンズフリー電話と音楽ファイル再生の機能を果たすのみ。すでにフォードからは、最新世代の「SYNC3」が発表されているが、タブレットに近い操作感覚を持つそれが、日本語化されてフォードの正規輸入モデルに搭載されるのは、まだまだ相当に先の話ということになるのだろう。
新型クーガという素晴らしいハードを手に入れた日本市場のフォード。それだけにソフトとしてのユーティリティをさらに高める機能や装備の充実には、これまで以上に積極的な姿勢で取り組む必要があるのではないか。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
山崎元裕|モーター・ジャーナリスト(日本自動車ジャーナリスト協会会員)
1963年新潟市生まれ、青山学院大学理工学部機械工学科卒業。少年期にスーパーカーブームの洗礼を受け、大学で機械工学を学ぶことを決意。自動車雑誌編 集部を経て、モーター・ジャーナリストとして独立する。現在でも、最も熱くなれるのは、スーパーカー&プレミアムカーの世界。それらのニューモデルが誕生 するモーターショーという場所は、必ず自分自身で取材したいという徹底したポリシーを持つ。