気になるニュース・気になる内幕---今日の朝刊(朝日、読売、毎日、産経、東京、日経の各紙・東京本社発行最終版)から注目の自動車関連記事をピックアップし、その内幕を分析するマスコミパトロール。
2015年8月31日付
●スズキ、VWと提携解消。国際仲裁裁が決定、株式買い戻しへ(読売・1面)
●JRまた燃え跡、山手線架線の滑車、陸橋から引火物、目黒(毎日・31面)
●走り出す日本の力、自動運転車加速する技術(産経・9面)
●内閣支持率46%に回復、不支持40%、70年談話「評価」42%(日経・1面)
●VWと提携解消世界の燃費規制対応課題、スズキ、再編の台風の目に(日経・9面)
ひとくちコメント
「ちょっと長かったが、喉の小骨が取れて非常にスッキリした。仲裁を申し立てた最大の目的が達成できたので満足している」。あの猛暑から一転、ミストシャワーのような秋雨が肌寒く感じる夏休み最後の日曜日夕方。東京・千代田区紀尾井町のホテルで行われたスズキの緊急記者会見で、鈴木修会長は、上機嫌でこう語った。
スズキが2009年12月から資本・業務提携を結んでいた独フォルクスワーゲン(VW)との提携解消を求め、国際仲裁裁判所に仲裁手続きを申し立てたのは2011年11月のこと。国際仲裁裁が8月29日夜、筆頭株主のVWが保有するスズキ株を売却すべきだとの決定を両社に伝えたことで、約4年にも及んだ争いはようやく終止符を打つことになる。
スズキとVWは今回の決定に従って、市場価格を参考に株式の売買交渉を進めるが、28日の東京市場でのスズキ株の終値は、1株4151円。それをベースにすれば買い取り金額は約4600億円相当とみられる。
きょうの各紙にも「スズキ、VWと提携解消へ、株買い戻し4600億円」などと、産経と日経が1面トップで大きく報じた。ただ、日経は「株価次第では増加する可能性もある」として、見出しには「5000億円規模」と伝えている。
一方のVW側も仲裁手続きでスズキとの提携解消が決まったことを受け、保有する19.9%のスズキ株を売却することを表明。VWが取得した2010年当時の株価と比べるとスズキ株は約2倍に上昇しており、VWは2000億円以上もの売却益を得ることになる。
また、各紙とも1面のほか、総合面などで「VWと提携解消」の解説記事を取り上げている。その焦点は今後、環境技術などでスズキが「自立して生きの残れるのかどうか」という「次の一手」を模索。このうち、読売は「スズキ独立路線へ」、朝日も「スズキ、当面は単独路線」として、自立の道を探る戦略を打ち出すことを指摘している。
ただ、「環境車開発は未知数」(読売)や「スズキ、独立懸念」(産経)、「世界の燃費規制、対応課題」(日経)などとして「両社の提携解消を引き金に、自動車業界の合従連衡が進む可能性がある」と報じている。
鈴木会長は会見で今後VWと別の分野で協力する考えがあるのかと聞かれると「たとえは悪いが、離婚した相手とまた寄りを戻して再婚することは有り得ないだろう」ときっぱりと否定した。
この日の緊急会見には新社長の鈴木俊宏氏も同席した。だが、このVW問題は修会長と原山保人副会長の専権事項のため、発言は控えていたが、先週の新型ソリオの発表会では、燃費向上などに努力を重ねている開発陣に対しては「やればできる」と述べるなど、「自立」を前提にしている考えも示していた。今後のスズキは経営も俊宏社長自身も「自立」がキーワードになりそうだ。