『グレイス』は、いろんな音がする。ハイブリッド車はモーター音がして当たり前なのだが、ダントツで車内にさまざまな高音が鳴り響くのだ。
そのひとつは、白バイが獲物を追いかけるときのサイレンに酷似していて、悪いことしていないのにドキドキしながら白いヘルメットにブルーの制服姿を探してしまう。
グレイスは、カクカクする。ミッションがDCTゆえの、揺れである。
グレイスより上のクラスはともあれ、グレイスの価格帯になると、こんなものかと寛容な気分で受け入れられる。ただ、減速していってかなり低速になったときのかくかく加減は受け入れ難い。それなりの速度で走行中、赤信号にあわせてブレーキを踏み、最後はそうっと停止したいのに、最後の最後で前後にカクカクする。
一瞬、加速したような錯覚すらする。カクカクするなら毎回すればいいのだが、そのときの速度や減速ぶりによってなったりならなかったりするのでタチが悪い。
DCTは燃費を向上させるための技術と知りつつ、またCVTはもう古いという機運があるのは知りつつも、CVTのなめらかさが恋しいのは私だけではないだろう。
後部座席にはきちんと座れ、トランクもしっかり広い。燃費も、街なかの渋滞にはまりながらも20km/リットルは軽く超えていく。ソツなくなんでもこなすマルチな才能なのだが、どこか器用貧乏さを感じてしまう。
あと、何か心にぐっと響く華やかさがあれば、この地味なカテゴリーでもインパクトが出てくるんだけど。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。