【注目軽&コンパクト】安全性・安心感はどう違う?…ロングドライブでスペック比較

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【注目軽&コンパクト】安全性・安心感はどう違う?…ロングドライブでスペック比較
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  • トヨタ ヴィッツ
  • ダイハツ タント
  • トヨタ ラクティス
  • スズキ ワゴンR(左)とダイハツ タント(右)
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コンパクトカーと軽自動車の実力は拮抗している部分と、それぞれが有利となる部分が比較的明確に分かれているのが特徴だ。それは安全性能であっても同じ事がいえる。

今回は、その特徴を比較するべく200kmの試乗を実行。持ち出した4台は、いずれもそのカテゴリーで人気のあるモデルばかり。コンパクトカーの代表として用意したのはトヨタ『ヴィッツ』と『ラクティス』。そして軽自動車の代表はスズキ『ワゴンR』とダイハツ『タント』だ。まずは日常走行シーンから4台を比べてみたい。

◆ヴィッツはボディのしっかり感と新エンジンの瞬発力が引き立つ

取材したヴィッツとラクティスが搭載するエンジンはともに1.3リットルだが、今回は手配の都合上、ヴィッツ「F」のみ新世代エンジンである「1NR-FKE」型(99ps/12.3kgf・m)を搭載していた。スペック上の変更点は従来型のエンジン比で5ps/0.2kgf・mの向上とわずかだが、トヨタがハイブリッド用エンジン向けに採用しているアトキンソンサイクル燃焼技術に加えてEGR(排ガスの一部を吸気させ環境性能を高める装置)によって熱効率を高めたことで、走行性能は大幅に向上している。さらに、上級クラスエンジンに採用している高圧縮比化や急速燃焼技術を搭載することで、高い圧縮比を保持しながら、相克するノッキングの発生を抑えて燃焼効率を高めることにも成功した。こうした数々の技術に合わせてトランスミッションであるSuper CVT-iも最適化されカタログ燃費は25.0km/リットルを達成。その結果、ガソリン車でありながら免税対象車となった。

2014年4月に行なわれたマイナーチェンジによって現行型の安心感は非常に高くなっている。ボディ各所をつなぎ合わせるスポット溶接箇所が車体後部に追加されたことや床下の各補強材が大型化されたことで、ボディ剛性(しっかり感)が大幅に向上したのだ。また、ボディの高剛性化に見合うようにショックアブソーバーも変更されているのだが、後輪からの突き上げが激減し、前輪の衝撃吸収力が飛躍的にアップしているのが手に取るようにわかる。

こうした安心感は人により感じ方が違うものだがヴィッツのガチッとした走りの質感は、それこそディーラーで試乗しただけでも多くのドライバーが感ずることのできるわかりやすい性能だ。主役の1.3リットルエンジンはSuper CVT-iとの協調制御によってドライバーの要求する駆動力をスムースに引き出してくれる。なかでも良かったのは、アクセル開度にして50%に満たない日常領域でのダイレクト感。ロングストローク型であることも手伝って、60km/h未満の常用域であればそれこそ1.5リットルクラスと遜色ない走りを堪能することができる。

とはいえ技術的なトピックからすると、いわゆる燃費数値に特化した面白みに欠けるエンジンのようだが、アトキンソンサイクルを採用するものの高負荷領域では一般的なエンジンと同じく通常燃焼サイクルとなるためパワーは十分。瞬発力も高いため高速道路などでの合流時でも安心だ。

◆直進安定性の高さが光るラクティス

ラクティスのグレードは「X」。前述の通り、取材車は一世代前の「1NR-FE」型を搭載していたが、現在販売されているラクティスは、今回のヴィッツと同じ新世代の「1NR-FKE」型を搭載する。

ラクティスの安心感は直径の大きな大径タイヤなどが生み出す安定した走行性能にみることができる。一般的にハイパワーエンジンを搭載したスポーツモデルは、タイヤの横幅を広くすることでカーブでのグリップ力とボディの安定性能を高める手法をとるが、それ故、燃費数値や静粛性では劣ってしまう。ラクティスの場合は、直径の大きなタイヤ(175/60R16。「1.5S」のみ185/60R16)を装着することで、タイヤの接地面を縦方向に増やすことで走行安定性を高め必要とされる走行安定性を手に入れながら、カタログ燃費では21.8km/リットル(「1.3G」)と優れた数値を両立させた。

高速走行では大径タイヤの採用と、それに見合うように設計された足回りによって直進安定性が非常に高い。前輪のトレッド(タイヤ左右間の距離)が1485mm(「1.5S」を除く)とワイドなことから、道路上のわだちなど乗り越えても安定感は高いままだ。加えてボディは空力特性を踏まえたデザインであるため、全高1585mmのトールボディではあるが風切り音が少なく、静粛性の目安のひとつである前後シート間での会話明瞭度(声の聞き取りやすさ)は、80km/h程度であっても50km/h程度での市街地走行時と大差ない。ドライバーは確かなハンドリング性能で、そして同乗者は静かなキャビンによって、それぞれが安心感を得ることができる。

◆ワゴンRとタントは取り回しの良さが日常使いの強い味方に

対する軽自動車の2台はどうだろうか? やはり小さなボディによる取り回しの良さはコンパクトカーよりも数段上だ。加えて左前部分の見切り性能が良いため対向車とのすれ違い時に気を遣うことがなく、ボディ全長の短さから狭い場所への駐車も苦にならない。

日常走行では市街地を走行している限りではコンパクトカー同様にキビキビとした走りが楽しめる。一部、登り坂での走行性能に若干の不満を覚えるのも事実だが、それは3名乗車以上でのこと。それよりも、ボディサイズからくる使い勝手のメリットがクルマ選びの上では重要だ。

ちなみに、これがターボエンジン搭載車であれば一気に解決する問題でもある。ターボエンジンではパワーはもとより、瞬発力を高めるトルク値が増えることから動力性能に対する不満のほとんどは解消する。もっとも、その代償として当然のことながら、高速走行などターボの過給に頼った走行シーンでは、それだけ燃料消費量が増えるため燃費数値は悪化する傾向にあるが、もともとカタログ燃費に優れている軽自動車だけに、悪化分を差し引いてもあまりある経済性は健在だ。

ターボモデルが選べるタントの場合、車両本体価格は140万円台とコンパクトカーと同等となるものの、コンパクトカーではオプション装備となったり、そもそも選べない装備も車種によっては存在するわけで、そこは日常的な用途に合わせて選択してもいいだろう。

気になる先進安全技術では、法規対応を見据え「横滑り防止装置」は4台とも標準装備だが、ワゴンRとタントのみ赤外線方式の「衝突被害軽減ブレーキ」が選べる点は魅力だ。ラクティスでは電動パワーステアリングと協調制御を行う「S-VSC」によって緻密な車両制御が行える。昨年11月に「Toyota Safety Sense」を発表しているトヨタでは、今後ほぼすべての乗用車に「衝突被害軽減ブレーキ」をはじめとしたADAS(Advanced Driver Assistance Systems)を設定し、全グレードで選択可能とすることからも期待がふくらむ。

今回、約200kmにわたるロングドライブを行なってみたが、コンパクトカー、軽自動車それぞれシーンによって感じられる安心感に違いあることがわかった。多人数乗車や高速道路を走行する機会が多い場合にはコンパクトカー、日常的に市街地で使う機会が多い場合には軽自動車。車両本体価格ではほぼ横並びなので、自分のライフスタイルにあった一台を見つけ出してほしい。

《西村直人@NAC》

西村直人@NAC

クルマとバイク、ふたつの社会の架け橋となることを目指す。専門分野はパーソナルモビリティだが、広い視野をもつためにWRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席したほか、東京都交通局のバスモニター役も務めた。大型第二種免許/けん引免許/大型二輪免許、2級小型船舶免許所有。日本自動車ジャーナリスト協会(A.J.A.J)理事。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会・東京二輪車安全運転推進委員会指導員。日本イラストレーション協会(JILLA)監事。

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