【山崎元裕の “B”の哲学】V8はW12の下位モデルではない…ベントレー フライングスパー V8 という選択

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ベントレー フライングスパー V8
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◆「コンチネンタル」シリーズとの差別化

現行型の『フライングスパー』は、2013年3月に開催されたジュネーブモーターショーで、オフィシャル・デビューを飾った。この時にまず印象的だったのは、車名からコンチネンタルの文字が消えたこと。これは『コンチネンタル』シリーズとの差別化を、ベントレーが特に強調したかったため、とも考えられる。

新型フライングスパーのセールスは、当然のことながら先代と同様に、6リットル仕様のW型12気筒ツインターボエンジンを搭載してスタートした。ベントレーはそれを、「史上最強、かつ最速の4ドアサルーン」と表現し、事実それが超高級サルーン市場の中で、特筆すべき運動性能を秘めたモデルであることは、すでに先代モデルがそれを証明していた。参考までにこのW型12気筒ツインターボエンジンの最高出力&最大トルクは625ps&800Nm。同時にボディは先代比で50kgの軽量化を実現したというから、カスタマーの走りに対しての期待度は、さらに大きなものとなった。

エクステリアもフルモデルチェンジによって、より魅力的なデザインとなった。フォーマルなシルエットの中にも、独特な力強さを感じるのは、全長ではほぼ先代のサイズを継承しながら、全幅を大きく拡大したことが第一の理由か。シャープなフロントフェンダーの峰や、ボディーサイドを前後方向に走るキャラクターラインは、外観での強いアイキャッチだ。フロントの大型グリルやエアインテーク、そしてフロントフェンダー上の「フライングB」をモチーフとしたエアベントは、フライングスパーがいかにパフォーマンスに拘ったモデルであるのかを想像させる。


◆V8はW12の下位モデルではない

W12モデルを先行して市場へと投入する一方で、ベントレーはもうひとつのプランを水面下で進行させていた。それは2008年のジュネーブモーターショーで宣言した、当時のレベルからCO2排出量を40%削減するという公約に対しての解答。動力性能と環境性能を高い次元で両立させた4リットル仕様のV型8気筒ツインターボエンジンを、コンチネンタル・シリーズに続いて、フライングスパーにも搭載しようというのが、そのプランの内容である。

まずコンチネンタル・シリーズに搭載された、新開発のV8エンジンは、デビューすると市場で圧倒的な人気を博すことになる。W12とV8という、2タイプのエンジンが設定されることになったと聞けば、後者はベーシックグレードと考えられることが一般的だが、ベントレーのコンセプトは違った。

W12とV8というパワーユニットの使い分けで、走りのキャラクターそのものを差別化しようと考えたのである。実際にサイズ面でも重量面でもコンパクトなV8エンジンは、いわゆるコーナリングマシンのパワーユニットとしては最適な存在。507psの最高出力と660Nmの最大トルクは、前で紹介したW12のスペックと比較すると確かに控えめな数字だが、シャープでかつスムーズな吹け上がりや、高速域でのパワーフィールでは、このV8エンジンには独自の魅力があった。低負荷時には4気筒を自動停止する、可変シリンダーシステムなど、環境性能に対しての取り組みももちろん、市場で高評価が得られた大きな理由だ。

そのV型8気筒ツインターボエンジンのフライングスパーへの移植は、当然のことながらベントレーにとっては自然な選択であったに違いない。実際にフライングスパーV8に搭載されるエンジンは、コンチネンタル・シリーズのそれと共通のもの。同シリーズにはさらに高性能なV8Sが登場しているが、フライングスパーには、現在の段階ではV8Sのプランは存在しないようだ。組み合わせられるミッションは8速ATで、フルタイム4WDの駆動方式を持つことも変わらない。サスペンションには4段階の切り替えが可能なCDC=連続可変式ダンピングコントロールを採用。ドライバーは走行スタイルやシチュエーションによって、好みのモードを選択できる。

エクステリアでのフライングスパーV8の特徴は、まずフロントに掲げられるウイングバッヂがW12のブラックに対して、V8ではレッドとされること。そしてフロントバンパーのエアインテーク内を水平方向に走るフィンが、W12のクローム仕上げから、スポーティーなブラックの樹脂製へと変化していることなど。エグゾーストシステムのテールパイプが、8字型のデザインとなっているのも、細かいながらも趣味性の強い演出だ。インテリアのフィニッシュや装備内容にも、W12からは若干の差があり、例えばW12で標準となる電動調節式のリアシートは、V8ではオプション設定。内装はもちろん、スタンダードな仕様でも圧倒的な高級感と品質感を誇るが、充実したオプションや、パーソナライゼーション・プログラムのマリナーを使用することで、自分自身の趣味を完全に反映させた内装を作り上げることも可能だ。

V8モデルの追加で、フライングスパーはさらに、超高級車市場での独自性と存在感を強めるのは間違いない。


山崎元裕|モーター・ジャーナリスト(日本自動車ジャーナリスト協会会員)
1963年新潟市生まれ、青山学院大学理工学部機械工学科卒業。少年期にスーパーカーブームの洗礼を受け、大学で機械工学を学ぶことを決意。自動車雑誌編集部を経て、モーター・ジャーナリストとして独立する。現在でも、最も熱くなれるのは、スーパーカー&プレミアムカーの世界。それらのニューモデルが誕生するモーターショーという場所は、必ず自分自身で取材したいという徹底したポリシーを持つ。
《山崎 元裕》

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