群馬からグローバルプロダクトを…スバル デザインに活用される 3D VR技術

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スバル・アドバンスドツアラー・コンセプト(参考画像)
  • スバル・アドバンスドツアラー・コンセプト(参考画像)
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  • スバル レガシィ コンセプト(参考画像)
  • スバル ヴィジヴ 2 コンセプト(参考画像)
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  • スバル アウトバック 新型(参考画像)
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6月に開催された「第22回3D&バーチャルリアリティー展」専門セミナーより、富士重工業・商品企画本部デザイン部の難波治氏による講演を以下レポートする。講演タイトルは「スバルデザインにおける3D・VR技術の活用について」。

スバルの商品企画本部デザイン部で、海外デザイン拠点を統括する難波氏は、スバルのデザインがグローバルな市場でどのように反映されるかをチェックする際にデジタルツール、VR技術を活用するという。

デザイン拠点である日本(群馬・太田)にいながら、グローバル市場、とりわけ主要な北米市場を考察するために、開発段階で活用されているデジタルツール・VR技術を紹介してくれた。

◆群馬・太田のデザイン拠点からグローバル市場を考察するために

2011年から2015年にかけて中期経営計画の目標値を二年前倒しで達成したスバル。販売台数目標であった85万台、連結営業利益も当初の計画を大幅に上回る3265億円を達成している。

しかし「スバルは日本からの輸出がメインで、北米に偏った、ある意味危険な状況にある。」と難波氏。例えば2013年度の自動車販売実績でみると、世界販売82万5000台のうち78%が海外。この海外売上のうち74%が北米となっている。

難波氏は現在のスバルの特徴を、(1)北米偏重、(2)デザイン開発ベースが日本(群馬)であること、(3)日本の自動車会社の中で最も小さいこと、の三つにまとめた。

「したがって各マーケットに応じて変えることができない。グローバルなニーズに対応できる商品をつくるのがスバルの宿命」と話す。

グローバルなニーズに対応できるかをチェックする際の活用例は、市場標準モデル、3Dモデルによるチェックなどが挙げられた。

例えば市場標準モデルは市場各車種の、“デザインの印象への影響が大きいポイント”を選点し、サンプリングしたのち、平均座標(係数をかけて補正を加える)をとって得られるモデル。これにスバルらしさを加えて特徴を可視化するのだという。この標準モデルから各市場における標準形の特徴が得られ、ドイツ、米、中における市場標準モデルを利用しながら開発車のポジショニングを行うことができるという。

◆緯度、湿度、道路舗装、あらゆる要素を考慮し“デザインが現地でどう映えるか”をチェック

また、グローバル市場の環境への対応も、VR技術・3Dを用いてシュミレーションする。重要なシミュレーション要素として、緯度の違いによる光の違いがあげられた。

高緯度(45~65度)の市場では陰影のメリハリがなく立体感に乏しいが、側面全体がまんべんなく照らされるため、車体のボリュームを感じるように見える。
低緯度市場では逆に、陰影が強く立体感が強調されて表現されるが、側面から見ると光を受ける面積が少なくなり、車体のボリュームが損なわれて華奢にみえる。

このほか、光だけでなく、湿度やアスファルト舗装色の映り込みまで、様々な要素を考慮してシミュレーションする。一例として、同じ車種をロサンゼルスと東京に置いた場合の見え方の違いについて取り上げられた。

ロサンゼルスでは明るい舗装で光が反射し、低い湿度に伴う空の青さが上面に映り込み、立体的にメリハリがつく。一方東京では水蒸気や人工物で乱反射した光により、立体の陰影がつきにくい。湿潤な気候によって白っぽくなった空が上面に映り込み、精彩を欠く。アスファルト舗装の色が映り込み、車体下端は暗く(黒く)表現される、など。

開発デザイン中は、開発車と各地の環境だけでなく、他車との走行シーンなども再現しているという。「自分たちが売っている他の車も投影し、存在感・立体感に間違いがないかチェックする。スーパーの駐車場ではどうみえるんだろう。北米の広い車線の中でどうみえるんだろう」と、様々なシーンでイメージと実物が一致するのかをチェックするという。

また、外からだけでなく、運転席からみた視界シミュレーションも行う。「ボンネットに中央の黄色い線が写ったとき、長時間運転しているドライバーの疲労が加わったとき、どんな景色になっているか、側面ガラスへの映り込みがどうなっているかなど、細かい点まで、デジタルツール、3D・VR技術を活用してチェックする。クルマづくりの最上流であるデザインの段階で修正していくことが重要」と述べた。

ただ、難波氏はVRが万能と捉えているわけではなく、有効な手法でありながら「どうしてもフィジカルな感覚すべてをチェックすることはできない」と述べ、現時点では実感覚と併用しながらの活用段階にある、との認識を示した。

《北原 梨津子》

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