【就任インタビュー】若者のクルマ・バイク離れ対策「しっかりやる」…自工会 池会長

自動車 ビジネス
日本自動車工業会の池史彦会長(ホンダ会長)
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日本自動車工業会の池史彦会長(ホンダ会長)は5月27日にメディア各社の共同インタビューに応じ、国内市場の活性化に向けて若年層にクルマやバイクの魅力を訴えていく活動に地道に取り組む方針を示した。

また、今年末までに政府・与党で見直しが進められる自動車関係税制については、環境性能の高い車両への大幅な税負担軽減を求める考えを強調した。

◆環境課税では高性能車の大幅な税負担軽減を

----:就任会見ではモノづくりの代表選手として日本経済の持続的成長に尽力したいと表明された。そのためには国内市場の活性化が重要としている。どう取り組まれるか。

池会長:会員企業各社が魅力ある商品を出し続けることが大切だ。一方で自工会としては、指摘されて久しい「若者の自動車離れ」といった課題に取り組みたい。これについては豊田(章男)前会長が、われわれ自動車産業の側から若者に近づく努力を真剣にされた。自工会としてはこの流れを絶やしてはいけない。昨年は各社の社長さんが大学での出前講義をしたが、学生からはポジティブな反応をいただいた。これは今年も続けていきたいし、地道にクルマやバイクの魅力を訴える活動を継続したい。

私たちの世代はクルマをもつのが夢であったし、デートにも必要という価値観だった。今日ではITがある種の革命を起こし、瞬時に世界中の情報が動画で手に入ることとなった。クルマで現地に出向くといった昔とは違った価値観を(若者が)もつようになっている。クルマやバイクは楽しいよと、われわれが言ってもなかなか理解されないかもしれないが、若者との接触によって価値観を勉強させていただこうとも思っている。

----:国内市場対策ではユーザーの税負担軽減も重要となる。年末の政府・与党の税制改正作業に向けてどう取り組んでいくか。

池会長:まずは自動車取得税について、消費税が10%に引き上げられる段階(=2015年10月の見込み)で確実に完全に廃止してもらうことだ。一方で新たに環境性能に応じた課税の導入が検討されている。その際、自動車取得税の3%(登録乗用車)を、そのままパンと乗せるのでは単なる税の付け替えとなる。環境性能のいい車については大幅な税負担の軽減を図っていただくよう自工会として取り組みたい。

日本のクルマ保有は約7500万台だが、直近の厳しい排ガス規制に適合していないクルマも多く走っている。税制によって環境性能のよいクルマに置き換わっていき、CO2(二酸化炭素)の排出削減につながるようになれば、根本的に正しい税制ということになる。

◆政治は不安定でもタイの経済リスクは大きくない

----:日本各社の重要なアジア拠点があるタイでの政変をどう見ているか。中長期的に見て重要性は変わらないのだろうか。

池会長:私も2008年から11年にかけてタイに勤務したが、政治的な対立は日常的だ。クーデターというと語感は厳しいが、タイで暮らしているとそういう実感はない。政治はずっと不安定な状態だが、経済に大きな影響を及ぼすことになっていない。現在の新車販売が減少しているのは、政変の影響ではなく2012年に実施したファーストカー・インセンティブ(初めて新車を購入する際の政府補助)で需要の先食いがあったからだ。

タイの政治情勢については、個人的には大きなカントリーリスクとは思っていない。クルマの普及がある程度進み、内需は大きく伸びないかもしれないが、サプライヤーの集積は厚く、歴史的にも数十年やっておられる企業が多い。また、政権が代わっても政府の政策には継続性があるので投資もしやすい。今後は予断を許さない状況で、注視しないといけないが、経済的には大きなリスクとは思っていない。

----:新興市場の中心である中国はどう見ているか。

池会長:(自動車各社の現地法人は)出資比率で50対50の対等だが、自由度は限られるという難しさはある。だが、世界一の需要国という魅力があるので、全世界の自動車メーカーがしのぎを削っている。

米国の新車需要は金融危機以前に戻っても1600万台レベルだが、2000万台を超える中国の大きさは魅力的だ。日中間は外交的には厳しい状況が続いているものの、経済的には依存し合っている。経済人レベルでの結びつきは強く、私自身、訪中するたびにフレンドリーな雰囲気での交流が保たれていると思う。政治的なギクシャク感が1日も早く雪解けするよう期待している。

◆免許制度の見直しなど二輪振興策もしっかりと

----:就任会見では二輪車(バイク)市場の活性化も進めたいと表明された。日本のモノづくりでのバイクの役割も含めて、どう対応するのか。

池会長:自工会の会長は、トヨタさんと日産さんを含む3社での輪番となっている。その3社で2輪をなりわいとしてやっているのはホンダだけだし、しっかり意識してやっていきたい。

足元の国内の状況は大型バイクを中心に活況となっている。支えているのは、「リターンライダー」であり、昔は憧れであったがなかなか乗れなかった大型車などに戻っておられる。シニア層が市場を盛り上げてくれているのだが、団塊の世代の方々がいつまでも乗り続けるというわけにはいかず、クルマ同様、バイクも若い方に乗っていただけるよう取り組まねばならない。免許制度についても、安全性を担保しながら見直しを訴えていきたい。

モノづくりという意味では自動車に比べて部品点数が少ないということもあり、日本からアジアなどへ(生産拠点が)どんどん出て行った。ホンダの場合だと日本は世界の生産台数の1%でしかない。そのために二輪の技術が進まないかというと、そうではなく1000万台以上を生産しているアジアで各社の技術は進歩し続けている。国内生産が減少したからといって、日本がモノづくりを支えきれなくなっているということではない。

◆プロフィール
池 史彦(いけ ふみひこ) 上智大卒。1982年ホンダに入社し、財務部長や汎用事業本部長などを経て2003年に取締役。07年常務取締役、11年取締役専務執行役員を経て13年4月から取締役会長。自工会では同年7月に副会長となり、14年5月から会長。東京都出身、62歳。

《池原照雄》

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