メルセデスの『G63 AMG 6×6』は、5つのディファレンシャルギア、ポータルアクスル、タイヤ空気圧調整システムと、通常の車では考えられないメカニカルな装備が満載である。これらはオフロードでは比類なき性能を発揮してくれるが、電子機器や機械で構成されている以上、メンテナンスは必要であり、修理が必要なこともあるだろう。
なまじ特殊な車両なだけに、実際所有するとなると(販売価格は8000万円だが)メンテナンスやサポート体制も気になるところだろう。特殊仕様の車だが、基本的に他のメルセデス車と同様で、「メルセデス・ケア」が付属する。新車から3年間は走行距離に関係なく、製品不具合などの無償サポートや24時間ツーリングサポートなどが受けられる。
とはいうものの日本では当面5台のみの販売となると、国内のエンジニアやメカニックでは対応できないのではないかという心配もあるかもしれない。これについても他の車両と同様に、エンジニアやサービススタッフに対する販売前の研修プログラムやトレーニングが用意された。基本的なメンテナンスや修理、サポートは各国で同じように受けられるという。
もし、これらのサポートで対応しきれないようなトラブルや問題が発生したとしても、メルセデスには「フライングドクター」という世界中を飛び回っているエキスパートがいる。
そのひとりであるノーベルト・メイヤー氏によれば、フライングドクターはグローバル全体で50名ほどいるといい、普段は車両メンテナンスの研修やトレーニングのトレーナーとして各国のディーラーなどを回っている。そこで実際に整備を行うこともあれば、現地のスタッフで対応しきれないときに呼び出されて出張診断や整備アドバイスなどを行うこともある。
フライングドクターが直接対応するのは、よほどの事態や緊急時となるそうだが、メイヤー氏は「アフガニスタンの大使館から大使の車の整備のため呼ばれたときは、出張期間中ずっと専属のボディガードがついたうえに、本人も防弾チョッキを着用させられていた」というエピソードを語る。もちろん、大使の車は防弾仕様の特殊車両だ。
政情不安の地域のおいて、要人の車の整備をするとなると、まずその国からの信頼がなければできない。また、そのことで命を狙われたり危険な目にも遭う可能性があるということだろう