独ベルリンで開催されているe-モビリティウィークスは、フォルクスワーゲン(VW)主催による電気自動車(EV)の訴求イベントだ。”electirified!(電化せよ!)”というスローガンの下、同社が考えるEVの姿を提案する。イベントの中心となるのは『e-ゴルフ』だ。
イベントでは、『e-up!』やジュネーブモーターショー14で登場した『ゴルフ GTE』もアピール。VWのEV/PHV戦略がにわかに加速したように見えた。ただ、ピュアEVの市販と言う意味では、欧州最大の自動車メーカーでありながら、VWは他社に遅れをとった。日本メーカーでは2009年に三菱自動車が『i-MiEV』を、翌2010年には日産が『リーフ』をすでに市販しているし、欧州メーカーでもBMW『i3』やスマートが『フォーツー エレクリックドライブ』などがすでに市場投入されている。VWはなぜいまEVを出すのか。VWが夢見るEVのカタチを追った。
◆"EV"ではないEV
e-ゴルフでベルリン市街を試乗する機会があった。1時間に満たない試乗ではあったが、市街地走行から高速走行までひと通り体験することができた。最も印象的だったのは、e-ゴルフが"EV"らしくないEVであるということであった。もちろん、発進時から最大限のトルクが発生しシームレスに加速していく姿は、まさにEVのそれなのであるが、逆に言えば、それ以外でEVを感じさせる要素がほぼ皆無なのである。
細かく言えば、エクステリアではLEDのヘッドライトやテールライト、ブラックペイントが施されたラジエターグリルとそこを横切るブルーのラインが、インテリアでは専用のシートやトリムが、普通の『ゴルフ』とは異なることを認識させる。しかし、目に見える部分・手に触れる部分のほとんどが通常のゴルフと変わらない。このことはドライバーに絶対的な安心感を与えてくれる。
従来のEVは、「EVであること」を強調するものが多かった。それによって、EVが次世代のモビリティであることを演出した。しかし、“Volkswagen”の直訳が「大衆車」であるように、また、ブランドスローガンが”Das Auto(=The car)”であるように、VWの基本理念は自動車の普及である。次世代パワートレインを使用したEVを普及させるためには、「特別な車」としてのEVではなく、あくまで「普通の車」である必要があった。
ゴルフは累計3000万台以上を販売している世界的なベストセラーカーであり、VWのアイデンティティとも言える1台だ。VWが当初からゴルフベースでEV量産車を開発していたというのも、EV普及を使命としていたからである。