クルマの軽量化とコストダウンを進めるには、樹脂パーツの採用比率を高めることも重要な要素だ。エンジニアリング・プラスチック、通称エンプラは熱に強く、強度も高いため、アルミ合金に取って代わるマテリアルとしてエンジンルーム内の部品に締める割合が年々増えている。
フェノール樹脂は、100年前の1910年から使われている世界初の合成樹脂だが、近年それがスーパーエンプラとして見直されているのである。そもそも耐熱性に優れるフェノール樹脂は、クルマのエンジンルームに収まる樹脂部品に早くから使われていた素材だ。
住友ベークライトHPP技術開発研究所 主任研究員の岡坂さんによれば、従来のフェノール樹脂は衝撃に弱いというのが欠点だったが、これもガラス繊維やカーボンファイバー、ケブラーなどのアラミド繊維をフェノール樹脂に混ぜることで、引っ張り強度と耐衝撃性が大幅に向上し、アルミ合金を上回るようになるそうだ。
実際にフェノール樹脂で作られているエンジン周辺の部品が展示されていたが、ウォータポンプやサーモスタットのハウジングやカバー、さらにはリブベルトで駆動するプーリーなど、様々な補器類が並ぶ。
さらには何と、エンジンのシリンダーヘッドやブロック、オイルパンなどがフェノール樹脂で作られたレーシングエンジンも展示されていたのだ。これは80年代にアメリカのポリモータ・リサーチ社(現コンポジット・キャスティング社)が製作したもので、DOHC4気筒2.2リッターの排気量から230HPを発生させたという。このエンジンに使われているガラス繊維強化フェノール樹脂も住友ベークライトが提供したそうだ。