1Lのコンパクトカー。こう聞いて、誰がこの走りを予想できるだろう?
そりゃもちろん、プジョー『208 GTi』のように、ピンポイントでユーザーを特定するクルマならありだ。しかし、『フィエスタ』なのである。ヤバい。ヤバすぎる。コンパクトカーに対する私の常識が音をたててくずれていく。
運転する前から軽い予兆はあったのだ。精悍になったフロントマスク。ぽってりと厚みを感じさせる塗料の感じ。グリップを握って開閉させるドアはずしりとして手ごたえで重厚感がある。このあたりで、安く仕上げたコンパクトカーではないことが伝わってくる。運転席のシートはスポーティ感があり座り心地がよく、後部座席はSUVの『クーガ』より立体感があってちゃんと座れるという(イワサダ調べ)オマケ付。インパネといい、操作するパーツといい、やる気のオーラがハンパなく漂っているのだ。
そしてスタートさせると、一瞬で加速していく軽やかさ。なんだこれは。このスタートダッシュの気持ちよさを増加させるのはサスペンションだ。カチっとした仕上がりは、無駄のないクラウチングスタートのようで、エンジンが発したパワーを瞬時に重力から解き放つ。この感覚は、フォードのフォーカス、さらにはクーガと同じタイプのキレのよさだが、クルマが軽く小さいだけ、キレキレも尋常じゃない。
コンパクトカーで、これはアリなのか。コンパクトカー万歳ニッポンへの宣戦布告ではないか。国産メーカーどうする?もちろん、ネガもある。時速40~50kmあたりで、ふら~っと流していると、こもり音が気にならないこともない。さらには、日本人のお約束、ナビシステムがダッシュボードにうまくはまらないのが、気に入らない人もいるだろう。しかし、それがどうした。こもり音が出たら、加速しちゃえ(制限速度があればシフトダウンだ)。カーナビはダッシュボードの上に乗っけるか、スマホやタブレットを使いこなせ。価格はちょい高め設定だが、この安全装備と走りなら納得である。いや、とにかくこの爽快を上まわる走りの気持ちよさは、生きているうちに体験しておくべきである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/エッセイスト
女性誌や一般誌を中心に活動。イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に精力的に取材中するほか、最近はノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。JAF理事。チャイルドシート指導員。国土交通省 安全基準検討会検討員他、委員を兼任。