【マツダ アクセラ 試乗】スポーツ 15S MT、ついつい走り回りたくなる痛快さ…高根英幸

試乗記 国産車
マツダ・アクセラ・スポーツ15S MT
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20S、15S セダン AT、ハイブリッドときて、最後に試乗したのが、この15S スポーツMTだった。今回試乗した中では一番シンプルなグレードで車両価格が安い。ところが、これが予想以上に痛快な走りを楽しませてくれたのだ。

速さ自体は大したことはない。発進加速だって、ATのスカイアクティブ・ドライブの方がトルコン効果で力強さを感じるほど。MTはダイレクトである分、エンジンのトルクが直に伝わるためややトルクが薄い感触なのだ。そんなゴーストップの多い市街地から首都高速に乗リ入れると俄然、元気を増してきた。

20Sと同じ大きさのボディとは思えないほど、走りが引き締まって感じる。それはクルマが軽いこととMTのダイレクト感に加え、足回りも絶妙なチューニングだからだろう。16インチのホイールに240kPaのタイヤ内圧、そしてバネとダンパー、ブッシュといったすべてのパーツがバランス良く引き締められている感じだ。車両重量は同じでもリヤエンドが軽いせいか、セダンに比べてクルマ全体での動きが軽快に感じる。

もっとも人によってはこの乗り心地は若干硬めに感じるかも知れない。路面の継ぎ目が酷い状況では、フロント回りにピッチの緩やかな共振が起こっていることもあった。だが気になるならタイヤの内圧を少々落とすだけで、乗り心地も共振も解決するはずだ。ともかく、実用性や経済性を高いレベルで実現しながら、こんな走りを披露してくれるとは思わなかった。

ATでは気になった、加速中の排気系の管内共鳴音も、MTではまったく起こらない。弾けるようなビート感を響かせるエンジンが気持ちいい。シフトフィールも節度感がよく、ドライビングポジションの良さもあって、シフトワークが楽しい。

所詮は1.5リットル、環境性能を重視したエンジンだけに一流のスポーツエンジンとは速さと高回転のフィールは比較にならない。そういう特出した部分はないけれど、クルマ全体としてのバランスの良さが、走りの純度を高めているのだ。20Sや15セダン/スポーツのAT、そしてハイブリッドと、それぞれに魅力はあるが、この15SスポーツMTだけは別のグレードを名乗った方がいいんじゃないかと思うほど、スポーティに感じる。

90年代あたりの欧州製ハッチバックの走りの楽しさに郷愁を感じているなら、一度この15S MTのステアリングを握ってみることをオススメする。その思い出を損なわぬまま、さらにレベルの高い走りと高い経済性を実現しているクルマだから。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア・居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

高根英幸/自動車&工業技術評論家(日本自動車ジャーナリスト協会会員)
芝浦工大機械工学部卒。トヨタ直営ディーラーの営業、輸入車専門誌の編集者を経てフリーの自動車ライターに。クルマのメカニズムすべてに興味をもち、旧車からハイテクまで納得いくまで解析。ドライビングだけでなくメンテナンスやモディファイも自ら積極的に楽しむ。自宅1Fの書斎兼ガレージには整備用リフトも完備。著書に「クルマのハイテク」(ソフトバンク・クリエイティブ刊)

《高根英幸》

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