【インタビュー】「自動運転が人々の命を救う」…BMW 自動運転プロジェクトリーダー、M・ハイムラス氏

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BMWグループのコネクティッド ドライブ プロジェクトリーダー、ミハエル・ハイムラス(Michael Heimrath)氏
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2020年代をターゲットに自動運転を実用化するため、各メーカーは研究開発に余念がない。BMWもそのひとつだ。同社が掲げる「駆け抜ける歓び」のスローガンと自動運転はどう関わっていくのか、またどのように商品力と結びつけていくのだろうか。

BMWグループのコネクティッド ドライブ プロジェクトリーダー、ミハエル・ハイムラス(Michael Heimrath)氏にモーターショー会場で話を聞いた。

◆ 2006年にサーキットで、2011年に高速道路で自動運転に成功

----:日本でもここ1、2年、自動運転についての話題が自動車メディアの間で盛り上がっています。この理由についてどのように考えますか。

ハイムラス:1、2年とのことですが、BMWは高度自動運転(Highly Automated Driving)を考え始めたのが2000年で、2006年にはラグナセカやニュルブルクリンクといったサーキットで自動運転を実証したことで最初の節目を迎えました。

その後、高度自動運転に必要な様々なモジュール開発が進みました。例えば「セーフティ・アシスタント」と言われているパーキング機能は、運転中のドライバーに何か支障があった場合、クルマが自動的に道路脇のパーキングレーンに安全に停車し、自動的に医療機関に通報するといったものです。

2011年には、もう一つの節目を迎えました。それは実際の高速道路において、自動運転によるデモ走行を成功させたことです。私たちがいるBMWの開発センターは、ミュンヘンの中心部近くにあるのですが、そこから空港の「ターミナルB」までの29kmを自動運転で走ったのです。このコースには、例えばジャンクションや複雑な出入口、そして空港への安全なアクセスなど、多くの難しい課題がありました。つまり、自動運転の進化はBMWにとってここ1、2年のことではなく、ずっと以前から準備してきたテーマで、その間も様々な技術開発が進んでいました。

◆ 自動運転と「駆けぬける歓び」は、理想的なコンビネーション

----:BMWは「駆けぬける歓び」という言葉に象徴されるように、ドライビングプレジャーを追求するブランドですが、それと今回の自動運転とは相反するものにも感じられます。両者の関係性をどのようにお考えですか。

ハイムラス:高度自動運転は、普段は「駆けぬける歓び」をキープしつつ、時には自動運転に頼ることもできるという、理想的なコンビネーションを実現すると私は考えています。

その前提として、私たちは3つの状況を想定しています。1つ目は、100%自分で運転する状況です。自分で運転することがリラックスにつながり、ドライビングプレジャーを得るという場合です。

2つ目は、長距離を走る必要がある時、あるいは自分がどうしても車内でやりたいことがある場合に、運転をクルマに任せてしまうという場合です。この場合は、あたかも飛行機のビジネスクラスのように車内でリラックスしたり、移動中の時間を運転以外のことに使ったりすることが可能になります。同時に、ステアリングホイールに触れればクルマがどういう状況で走っているかをフィードバックとして感じることができます。

3つ目は、ドライバーが大きなストレス下にあったり、道に不慣れだったりする状況です。この場合は、自動運転のアルゴリズムから得られる結果がステアリングホイールからドライバーに伝わり、1秒か2秒といった短い間、ステアリングアシストなどの小さなヘルプを得ることができます。この時ドライバーは、自分で運転しながらも、クルマが自分のことを気遣ってくれていると感じることができます。

こうした3つの状況に私たちが対応するということは、ドライバーに多くの選択肢を提供できるということです。これが私たちが目指している自動運転なのです。

◆ ステアリングは依然、クルマとの重要なコミュニケーション手段

----:自動運転とドライビングプレジャーを両立するには、具体的にどのような仕組みやディバイスがあるのでしょうか。

ハイムラス:ドライビングプレジャーをドライバーに伝えるのに最も重要なツールは、やはりステアリングホイールだと考えています。しかし、これが自動運転になると、ステアリングホイールに触れなくてもいいという状況になりますよね。

これを開発の段階に沿って説明してみましょう。まず、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)が登場し、次に(停止および再発進を自動化した)ACC ストップ&ゴーが現れ、さらに渋滞時の走行アシストを行う「ジャム・アシスタント」に進化しました。しかし今もドライバーは、数秒間に一度ステアリングに触れることで「クルマをコントロールしているよ」とクルマ側に伝えている段階です。

これが次の世代では、例えば10分間くらいステアリングに触れなくても、クルマが安全に走行する段階に入るでしょう。ただし、それでも依然、ステアリングホイールはドライバーとクルマとのコミュニケーション手段として重要な手段であると考えています。

もちろん、視覚から得られる情報も重要です。例えばヘッドアップディスプレイは、道路で今、何が起こっているのかをプレビューするには理想的な手段ですが、ここで私たち開発者が注意すべきは、ドライバーに対して情報をオーバーロードしない(与え過ぎない)ということです。ドライバーの特性や状況に応じて、バランスよく情報を与えているかどうかが重要です。

◆ 「ダブルセーフティ」で10秒間の安全を確保

ハイムラス:高度自動運転と半自動運転(Partially Automated Driving)を比べた場合、前者の方がはるかに技術的な課題が大きいのは言うまでもありません。例えば、ジャム・ アシスタントのような半自動運転の場合、ドライバーは自動運転の状態から、ほぼ瞬時に運転の主導権を取り戻せますが、一方で、高度自動運転になると、例えば10秒間、運転の主導権を取り戻せないという状況を想定し、その間100%の安全を確保しなくてはいけません。これは私たちにとって、技術的に大きなチャレンジです。なぜならクルマにとって未知の状況であっても、10秒間は安全が保たれなくてはいけないからです。

そのため、私たちは「ダブルセーフティ」と呼ばれるシステムを考えています。それはモノカメラ、ステレオカメラ、レーダー、超音波など6つのセンサーで周辺環境を監視し、アルゴリズムによって次に何をすべきか答えを得る際に、1つのセンサーからではなく、2つのセンサーから同じ答えを得て初めて操作が実行されるというものです。これはつまり、アーキテクチャー(設計思想)上、二重の冗長性によって安全性を確保しているということです。

----:こうした二重の冗長性による安全確保は、生産コストや車両価格に反映され、普及を阻む要因となりませんか。

ハイムラス:高度自動運転を開発する中で、私たちがすべきことは、ステアリングやブレーキにどのような情報を伝えるのか、つまりデータ解析の精度を上げるといったソフトウエアの部分だと思っています。ですので、これから追加で非常に高価なハードウエアが必要になるとは思っていません。必要なのはインテリジェントに処理するためのノウハウに磨きをかけることなのです。

また、お話してきたセンサーのほとんどは、将来的には交通法規上、装備が義務化されると考えています。というのも、こうした自動運転技術は、直接的に人命に関わる分野だからです。

◆ 今後の課題は、法律の整備や保険の問題

----:高度自動運転を実用化する上で難しいのが、国や地域によって異なる法律や安全基準への対応、そして社会的コンセンサスだと思います。それらの課題についてどのように感じていますか。

ハイムラス:法的整備は、欧州、米国、アジアの3地域に分けて考えています。欧州ではすでに円卓会議という形で、ベルリンにメーカーやサプライヤーなどが集まり、法律をどのように改正すればいいか話し合いが持たれています。また、法律関係でもう一つ、決着がついていないものが保険です。高度自動運転で走行中に何かが起こった時、誰が責任を取るのかも未解決の問題として残っています。

しかし私たち産業界としては、もしこの高度自動運転が実現されれば、クルマの乗員だけでなく、歩行者など周辺の人たちの安全性に関して、優れたソリューションを提供できるという方向でアプローチしています。なぜなら高度自動運転は、一般的なドライバーよりも、より高い信頼性を備え得るからです。高度自動運転の実現によって、事故を防ぎ、多くの人々の命を救うことができる。これが私たちの立場です。

《聞き手:北島友和、まとめ:丹羽圭@DAYS》
《丹羽圭@DAYS》

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