【池原照雄の単眼複眼】自動運転時代へのルート…日産の開発キーマンに聞く

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日産 自動運転車 (米国カリフォルニア州)
  • 日産 自動運転車 (米国カリフォルニア州)
  • 日産 電子技術開発本部 ITS開発グループ担当部長 飯島徹也氏
  • 日産 自動運転車 (米国カリフォルニア州)
  • 日産 自動運転車の運転席 (米国カリフォルニア州)
  • 日産 自動運転車のセンサー配置図
  • 日産 自動運転車による自動駐車 (米国カリフォルニア州)
日産自動車は、米国カリフォルニア州でこのほど開催したグローバルイベントで、自動運転の最新技術を実演した。電気自動車『リーフ』をベースに開発した車両は、実験公開用の敷地内ではあるが、ヒトや他の車、障害物などにぶつからず自律走行する。

同社は8月下旬に、2020年までには「革新的な自動運転技術を複数車種に搭載する」との方針も宣言した。もちろん、自動運転可能なクルマが街に出るには、法規制やインフラの整備などが必要であり、自動車産業だけで解決できるものではない。日産の自動運転技術開発のキーマンである電子技術開発本部・ITS開発グループ担当部長の飯島徹也氏に、技術課題なども含め解説してもらった。


◆ハンドルを握らない運転と法規

国によって時期の違いはあるものの、馬車と自動車が混在した時代から、馬車は「御者」、自動車は「運転手」が車両を制御するのが法で規定されてきた。国交省の資料によると、道路交通の国際的な枠組みにはジュネーブ条約(1949年)とウィーン条約(1968年)があり、日本や米国などは前者、欧州諸国などは後者を批准し、道路交通法といった国内法に落とし込んでいる。

□飯島視点…「自動運転はハンドルから手を離す方向なので、今の法規では対応できない。現行法で解釈を広げる、あるいは新しい法を制定するということになろうが、当然ながら国際協調が必要になる。自動車運転の新たな変革期が訪れたわけであり、(法整備の)スピード感も求められよう。ただし、立法機関に押し付けるのでなく、産学も含めて協力、検討しなければならない」


◆技術課題はセンサーと人工知能

飯島氏は技術開発の課題は、センサーと人口知能に集約されると指摘する。センサーは人間の眼に代わって、クルマの外界を的確に見る能力が求められる。日産が米国で公開中の車両にはカメラ、ミリ波レーダー、レーザースキャナーがそれぞれ複数台、搭載されている(=別掲のイラスト写真参照)。カメラは車外にある対象物の形状を捉えて何であるかを判断、またレーザースキャナーはその対象物との距離を測るといった具合にセンサーが力を合わせ、刻々と変化する周囲360度の状況を把握する。

□飯島視点…「センサーのなかでは、3次元の計測ができるレーザースキャナーが車両安全技術にとってすごく大きなものとなる。2008年くらいから車両用が登場してきた。グーグル社さんの自動運転車両のルーフに取り付けられているのもレーザースキャナー。カメラは形の認識は得意だが距離は苦手、レーダーは遠くまで見えるが精度が良くないと、それぞれ短所がある。将来はレーザースキャナーだけで人間の視覚と同じように形や距離が認識できるようになるのではないか。今は車両1台に何個も必要だが、やがて個数は減り、サイズも驚くほど小型化が進むはずだ」


◆莫大な高速プロセッサーが‥‥

自動運転を制御するのは人間の脳に代わる人工知能、すなわち車載用ECUである。飯島氏は、3つのステップで求められる人工知能を分かりやすく解説する。まず眼の役目を担う知能―これはセンサーが捉えた周囲の物体などを素早く認識する性能が求められる。次いでクルマをどこに移動させるかを判断する知能―例えば、道路に急に人が飛び出した際にクルマが回避できるスペースを探すといった役目だ。そして3番目のステップが難易度の高いクルマを操作する知能―衝突を回避したり、制限速度を維持したりするためハンドル、ブレーキ、アクセルの操作を最適に組み合わせ、それぞれのアクチュエーター(作動装置)に指令をだす知能である。

□飯島視点…「人工知能が処理すべき情報量は極めて多く、高速処理が求められる。従って莫大な高速プロセッサーが必要だし、データ通信についても新たな方式が必要になるかもしれない。(自動運転の実用化には)センサーも人工知能も、世界で今考えられる最も優れたものを採用していくことだ」


◆2020年の自動運転とは?

自動運転技術をめぐっては、世界の自動車メーカーやサプライヤーのみならずIT企業や大学、研究機関などが実用化への開発を加速させている。では日産が「革新的な自動運転技術」を搭載するという2020年時点の自動運転の定義とは? 飯島氏は「(技術要素の)オプションが多すぎて、(自動車各社とも)今の段階では特定できないというのが実情ではないか」と指摘する。さらに、20年の段階では「ボタンを押せば目的地に行ってくれるというとこまではいかないだろう」とも見ている。

□飯島視点…「普及には技術的課題とともに、国際的な技術の標準化、つまりルールづくりも必要になる。少なくともドライバーと自動運転装置のインターフェース(接点)の規格は国際的に同じでないと…。技術で先行したところがデファクト(事実上の標準)を作るという局面もあろうが、この分野に関してはより国際協調が必要だと思う」

「実際に自動運転技術のクルマが走りだすのは、国内外を問わず、やはり道路側のインフラが整備しやすい高速道路からとなる。ただし、極端に道路側のインフラに依存すると走行の効率は悪くなってしまう。レーンは必ず白線で仕切る、速度標識は同一にするといった最低の規格を定めるだけでも、高速道路では相当早い時期に自動運転のクルマが走れることになろう。2020年には東京でオリンピックとパラリンピックが開催される。日本が注目される象徴的な年に、先進の技術を発信していきたいと考えている」
《池原照雄》

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