生活アイテムの高密度実装と丁寧な仕上げが売りの日本製キャンピングカー。そのクルマ作りのノウハウを特装車に生かし、海外に売り込もうという動きが出てきている。
鹿児島を拠点にキャンピングカーの製作、販売を行なっているキャンパー鹿児島の川崎康一郎社長は「早ければ今年にも豊田通商と共同で香港でリムジン化した特装車の販売を開始する予定です」と、中国向けの特装車ビジネスに関するプランを語る。
「中国では日本と同じくミニバンの人気が高い。なかでも市販車に飽き足らない富裕層は、ミニバンの内装を豪華に改造した特装車に強い関心を持っています。キャンピングカー製作で培ったクラフトマンシップを投入したオーダーメイド車で、鹿児島発のものづくりをアピールしたいですね」
“Made in 薩摩”を標榜するキャンパー鹿児島は2月上旬に行われたジャパンキャンピングカーショー2013に新作の『inplus(インプラス)』を出品した。トヨタ『ハイエース』をベースに室内を全面改装。438万円からという低価格ながら、フルフラット、対面ソファ、多段ベッドと変幻自在のアレンジメントが可能なシート、ギャレー(流し台)、冷蔵庫、燃焼式ヒーター、300Ahリチウムイオン電池&正弦波インバーターなどが標準装備。大型キャンピングカーさながらの遮音・断熱処理も施されている。
実物を見るても仕上げの良さはかなりのもので、フローリング床や明るい色のトリム類などで彩られた室内は、さながらミドルクラスマンションの一室だった。この意匠力、工作力は、日本のユーザーと同様、クルマを自分の部屋の延長ととらえる向きの多い中国ユーザーに高い訴求力を発揮することだろう。
ちなみに中国・香港向け特装車のベース車両はハイエースではなく、現地で人気の高い『アルファード』になるという。中国のユーザーはメンツへのこだわりや経済的階級意識が非常に強いのが特徴。「室内空間の確保という点ではハイエースが有利なのですが、中国ではどれだけ豪華に改装しても『何だ、商用車じゃないか』とみられる。彼らにとってはリムジンのベースは乗用モデルでなければならないんです」(川崎氏)
日本のキャンピングカー市場は年間4000台程度。毎年15万台以上が売れる本場ヨーロッパ市場の約40分の1という小ささで、改装メーカーも小規模な企業がほとんどだ。丁寧な工作、比較的狭いクルマの改装といった得意分野を生かしたミニバン改装は、日本のコーチビルダーが世界に存在感を示すのにうってつけの分野。アメリカの独壇場であるスーパーリムジン、ヨーロッパが圧倒的なキャンピングカーに対抗可能な特装車の“第三極”となれるか。そのチャレンジに注目したいところだ。