本格普及に向け、相次ぐグローバル提携
燃料電池車(FCV)の開発をめぐるグローバル提携が相次いで動き出した。FCVは2015年にトヨタ自動車などが現行のリース方式から売り切り販売に転換し、量産化へ踏み出すが、世界の大手各社による提携で、2020年前後の本格普及に向けた動きにも弾みがつく。
トヨタと独BMWグループは、かねて進めてきた広範な技術提携の一環として燃料電池(FC)システムで中長期的な協力を進めることになった。トヨタが15年に独自のFCVを市販するのに続き、両社は20年に共同開発によるシステムの実用化を図る計画だ。
そうした動きに対抗するように、日産自動車と独ダイムラー、米フォードモーターが同様にFCシステムの共同開発で合意した。こちらは早ければ17年には「手ごろな価格の量販車の発売」を目指すという。
「究極のエコカー」だがテンポは速い?
日産など3社の提携は、もともとダイムラーがルノー・日産およびフォードとそれぞれ進めていたFCに関する共同開発を、ひとまとめにした形だ。ダイムラーとフォードは、07年からカナダの燃料電池メーカーであるバラード・パワーシステムズ社とともにFCシステムの開発会社を立ち上げていた。
一方のダイムラーとルノー・日産は10年4月の業務・資本提携以来、FCや既存パワートレインの共同開発など幅広い協業を進めてきた。この3社のうち、フォードは11年8月にトヨタとハイブリッド車(HV)技術の共同開発で提携している。次世代環境技術では、今後もこうした分野限定の提携関係が企業間を複雑に入り組みながら進むことになろう。
走行時はゼロエミッションであり、かつ既存の内燃機関と同等の航続距離をもつFCVは「究極のエコカー」(トヨタの内山田竹志副会長)でありながら、実は普及テンポはかなり速くなる雲行きなのだ。長距離走行向けなど特定カテゴリーでは、航続距離やコスト、急速充電インフラで難儀している電気自動車(EV)よりもFCVが有利となる可能性が高いからだ。
更なるグループ化が進む
そうした現状認識は世界の自動車産業には常識となりつつあり、それが大手間の提携を加速させている。加えてFCシステムの開発費用は、バッテリーが主体のEVとはケタ違いであることも、このところの共同戦線の成立を後押ししている。さらに、水素供給インフラの整備に大同団結が不可欠ということも、EVでの充電方式の対立から学んだところだ。
トヨタの内山田副会長は、BMWとの提携により「われわれの英知でコスト負担を軽減しながら開発のスピードを大幅に引き上げることが可能」と自信を示す。EVで先行する日産の志賀俊之COOは、FCシステムの開発については「どこかの時点でさらなるグループ化が進む可能性」を指摘する。今のところ、FCVでは単独で走っているホンダや米GM(ゼネラルモーターズ)も、新たな提携を模索することになろう。