SDVシフトが問う日本自動車産業の勝ち筋とは…ナカニシ自動車産業リサーチ 中西孝樹氏[インタビュー]

SDVシフトが問う日本自動車産業の勝ち筋とは…ナカニシ自動車産業リサーチ 中西孝樹氏[インタビュー]
  • SDVシフトが問う日本自動車産業の勝ち筋とは…ナカニシ自動車産業リサーチ 中西孝樹氏[インタビュー]

来る4月23日、オンラインセミナー「【Season4】中西孝樹の自動車・モビリティ産業インサイトvol.3 中国EV×AIが進む世界自動車産業の構図~SDVシフトでトヨタ、ホンダの勝ち筋はどこにあるのか~」が開催される。セミナーに登壇するのは、ナカニシ自動車産業リサーチ 代表の中西孝樹氏。

SDV時代への移行が進み、競争軸の変化とその対応が迫られるなかで、日本はこの先どう戦うべきか。自動車産業分析の第一人者である中西氏に、現在の自動車産業の構図と日本の勝ち筋を聞いた。

三つに分かれた世界の競争構図

現在の世界自動車市場における競争グループは、SDVが提供する価値の度合いによって大きく三つのグループに整理されると、ナカニシ自動車産業リサーチ 代表の中西孝樹氏は指摘する。

第一のグループは、テスラや、BYDをはじめとする中国新興EV勢など、革命的なSDVを提供できるプレイヤーだ。過去4~5年間で、このグループは世界シェアを約10ポイント近く獲得してきた。

第二のグループは、トヨタ、スズキ、ヒョンデのように、伝統的な品質・価値を軸に安定した競争力を持つプレイヤーで、シェアはむしろ約1ポイント上昇している。

そして問題は第三のグループだ。フォルクスワーゲン、ステランティス、ホンダ、日産、GM、フォードなどが該当し、このグループが最も大きくシェアを失っている。

「これらのメーカーに共通するのは、EVシフトを大きく加速させてきたことです。しかしながら、市場や地政学の変化によって、2025年には膨大なEV関連損失を計上することになってしまいました。合計で約12兆円にも達します。一歩間違えれば企業の命取りになるような規模です」

「このままの状況が続けば、テスラ・中国勢の第一グループの勢力はさらに拡大し、第二グループが市場を守る一方で、その間に挟まれた第三グループがどんどん市場を失っていくでしょう。日本勢で見れば、トヨタ・スズキが第二グループに属していますが、ホンダと日産が第三グループの苦境から抜け出せていません」

中国の「国家戦略」の全体像を読み解く

ではなぜ、中国勢がここまでの競争力を持つに至ったのか。その背景は「中国製造2025」に遡る国家戦略にあると中西氏は示唆する。

「過去、中国は自動車強国になる目標を立て、日本を徹底的に研究しました。しかしながらその結論は、エンジン技術ではどうやっても追いつけない、というものでした。では何を突破口としたのか。それは自動車の“電気リッチ化”です。電池の使用量を増やして電気リッチ化を進めれば、エンジン制御のハンディキャップを乗り越えられる。そのアプリケーションがBEVであり、プラグインハイブリッドだったわけです」

その結果、バッテリー産業の上流から下流まで、いまや中国は世界のチョークポイントを握り、EVの製造大国となった。しかしいま中国が見据えているのは、その先にあるさらに壮大な絵図だ。

「中国の次のステップは、SDVの普及を進めながら、最終的にはスマートシティという巨大な社会エコシステムをハード・ソフト両面で輸出していくことです。これは、デジタルチャイナという国家戦略の中で、半導体・ソフトウェア・AIの社会的サプライチェーンの一定規模を握る、という戦略であり、その実現を担っているのが、まさにSDV、人型ロボット、ドローン、つまりフィジカルAIの要素技術です」

壮大な国家戦略を進める中国。一方で日本の状況を顧みると、なんとも頼りなく見える。

「日本では、自動車メーカーが個社ごとにバラバラに戦っています。竹槍で戦っているようなものです。中国の国家戦略とアメリカのメガテックジャイアントに挟まれた中で、いかに生き残っていくかを見出すことが、極めて重要な時期に来ています」

「良品廉価に国境はありません。70年代の日本車が、アメリカから馬鹿にされながらも最終的には市場を席巻したように、中国車も必ずアメリカで走るようになる。現時点ではアメリカやインドは中国車をブロックしていますが、これを頼りにするのは危険すぎます

インチャイナ・フォーチャイナ戦略の真の意味

日本の自動車メーカーが直面しているもうひとつの課題が、SDVでの出遅れだ。2023年の上海モーターショーで業界が認識したのは“中国先行”の現実だった。

「中国のSDVがグローバルよりも3年ほど先行して開発が進んでいることが、2023年の上海モーターショーで明確になりました。先進的なSDVが大挙して市場に出てくることがはっきりした。この事実こそが、世界の自動車メーカーにとってのウェイクアップコールでした。」

この衝撃により、世界の自動車メーカーは戦略変更を余儀なくされた。中国のサプライチェーンを活用して中国向けモデルを開発しながらSDV技術を習得し、それをグローバルに展開することが必然となったのだ。

「中国向けSDVとグローバルSDVとの間には約3年の時差があります。その間にも、中国勢は東南アジア・南米・アフリカなどで市場シェアを奪い続けます。中国で学んだことをグローバルモデルに転用しなければ、敗北の連鎖が起きることになります」


《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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