次期『Aクラス』の「ヤングカップル向けのスポーティ・モデル」への変身を前提に、これまでのAクラスの支持層もカバーすべく先んじてモデルチェンジを図ったこのモデル。“高床式構造”を捨てたボディは乗降性が大幅向上。「それだけでも、とても嬉しい」というのが第一印象。
ドライバーズ・シートでポジションを決めると、高い位置で脚を前方に投げ出して座るという従来型での世にも奇妙なスタンスは見事に姿を消し、“普通に座れる”事にここでもひと安心。こうして、アップライトな姿勢で座るので、その分後席での足元広くなり、ラゲッジスペースも広々。特に、後席シートバックを前倒しした際の広大さは、もはや大きなワゴン並み。
インテリア各部を見回すと質感の向上が顕著で、そのテイストは「『Cクラス』以上のメルセデス」と今や変わらず。“タブレット端末を置いた風”のセンターディスプレイや電動式パーキング・ブレーキの採用など、各装備の内容やデザインも最新モデルとして納得。
けれども、走り始めると正直「Cクラス以上とはやはり差がアリ」。1.6リッター・ターボエンジンとDCTの組み合わせが生み出す動力性能は、特に走り出し時点での力感が物足りなく、フットワーク・テイストはグレード、タイヤ・サイズに関わりなく「ストローク感に欠け、ツッパリ気味」なのが気になるもの。
実は日本仕様は、“立体駐車場問題”を回避すべく1550mm以下の全高にこだわった結果、ヨーロッパではオプション設定の20mmローダウン・サスを全車で標準採用。同時に、ユーティリティ性向上のためやはり標準化されたランフラット・タイヤの採用も「悪さ」をしている感触拭いきれず。
このカテゴリーで走りの質感を語るならば、「もはやVW『ゴルフ』がライバル知らず」---それが、自身の率直な印象。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★
オススメ度:★★★
河村康彦|モータージャーナリスト
1985年よりフリーランス活動を開始。自動車専門誌を中心に健筆を振るっているモータージャーナリスト。ワールド・カーオブザイヤー選考委員、インターナショナル・エンジンオブザイヤー選考委員。