【池原照雄の単眼複眼】2012年は体質転換の岐路

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◆トヨタの生産がどんどん流出するわけではない

2011年の国内自動車生産は、前年を13%下回る840万台となった。リーマンショック後の減産から立ち直る途上にあったのに、再び落ち込んだ。ただし、超円高に耐えられなくて海外にシフトしたわけではなく、相次いだ自然災害が主因だ。輸出採算は悪化したままだが、各社が挽回生産を進める今年は大幅な増産が確実であり、少なくとも10年(963万台)の水準までは回復可能と見る。

トヨタ自動車は先週、米国インディアナ工場でSUV『ハイランダー』の増産投資を行う計画を発表した。これに伴い、トヨタ自動車九州での年3万台規模の生産は2013年後半に打ち切り、輸出機能を米国に移す方針だ。一部メディアでは、円高にからめて後段の方が注目され、トヨタの国内生産重視に「限界」との見出しも踊った。

この計画は、確かに円高対策という要素が大きいが、現地の需要増に対応した生産の集約(=ラインの寄せ停め)による効率化という狙いもある。このまま、どんどんトヨタの国内生産が細っていくわけではない。

◆維持ラインのハードルは相対的に低下

とくに今年は、同社のみならず日本各社が自然災害による昨年の失地を取り戻すため、攻勢をかける。トヨタは12年暦年の世界販売(ダイハツ、日野除く)について、前年を21%上回って過去最高となる858万台とする計画を打ち出した。

日本メーカーで災害の影響が最も大きかったホンダの伊東孝紳社長は、タイ工場が復旧する4月以降の12年度ベースで、「400万台超をめざす」と明言している。これも過去最高の数字となる。

11年の世界販売が467万台と記録を更新した日産自動車は、まだ計画を示していないが、足元の好調さから今年は初の500万台突破も不可能ではない。このように、グローバル市場でのパフォーマンスが高まれば、各社が日本でのモノづくりを守るため、維持ラインとする国内生産のハードルは相対的に低くなる。

◆為替変動への抵抗力を高めるには…

そのラインはトヨタが300万台、日産、ホンダ、スズキ、マツダはそれぞれ、概ね100万台としてきた。11年にこのラインを確保したのは111万台の日産のみで、トヨタは276万台、ホンダは71万台と大きく割り込んだ。

だが、今年は少なくとも大手3社はこのラインに届く生産となろう。そうでないと、各社が想定する国内外の需要には応じきれない。

海外市場を中心にグローバルで販売を伸ばせば、着実に為替変動への抵抗力は高まる。その間に円高対策として「車両価格の引き上げやモデルミックスの見直し」(トヨタの伊地知隆彦取締役・専務役員)などを図ることで、やがて日本の生産の死守ラインをクリアするのも容易になっていく。今年は日本各社が、そうした体質転換を進めることができるか否かの岐路となる。

《池原照雄》

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