ひゅるるる~。新型マーチを見た瞬間に、私の胸のなかを吹き抜けた冷たい風の音である。
あの愛らしく魅力的だったマーチはどこへ行ったのか。これではまるで、おじさんの営業車ではないか。というか、日産の人はそういうクルマを作りたかったのだから、これはある意味、成功なのだろう。責めるべきはマーチではなく、そのコンセプトなのだ。
世界的にコンパクトカーに注目が集まる中、マーチに与えられた使命は「万人受け」である。だとしたらガールズだけに訴えている場合ではないのだろう。だからってここまでつまんないデザインにしなくたっていいのにと思う。ついでに、シートはうすっぺらいし(対先代)、シフトレバーはちゃちいし(対先代)、元ガールズな私としては、がっかりだよ~。
ただ、リッターあたり26kmという燃費のよさには、ぐぐっとひかれる。マーチ初の3気筒エンジンにもトライし、それなりの静粛性を保っているあたりも、褒めたい。
なによりアイドリングストップ機能が使いやすい。エンジン停止からの再スタートは、ブレーキペダルから足を離すだけでなく、ハンドルをちょこっと動かすだけでもさっとかかってくれる。手足のコラボによって右折のときのタイミングを逃さず発進できるあたりは、大いに褒め称えたい。ついでに、車庫入れで苦労するガールズに向けては、タイヤの向きがどっちかわかる表示まで用意してあり、なかなか気が利くじゃないの。
だけど、ずっと乗っているとシートのうすさが悲しくなるよ。なにより買い物から帰ってきたときに待っているのがこのデザイン……ってのは、やっぱりいただけないと思うんですけれど。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/エッセイスト
女性誌や一般誌を中心に活動。イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に精力的に取材中するほか、最近はノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。JAF理事。チャイルドシート指導員。国土交通省安全基準検討会検討員他、委員を兼任。