4~5月は金融危機以前まで戻った
自動車メーカー各社の海外生産が急回復している。乗用車8社の合計では2010年1月からほぼ毎月100万台レベルを維持しており、これは過去最高だった2007年を上回るペースである。中国など新興諸国の需要が好調なためで、各社の第1四半期業績もV字回復軌道を描くことになろう。
乗用車8社の5月の海外生産は前年同月比43%増の100万1300台となった。前年比プラスは2009年9月以降、9か月連続。全社が前年実績を上回り、三菱自動車は前年の約2倍、日産自動車は約1.5倍となるなど各社とも大きく伸ばした。
4月と5月は8社合計で金融危機前の2008年の同月レベルまで回復しており、海外生産というくくりでは危機を脱したと見ることができる。年初来の海外新車需要は欧州が大幅に落ち込み、米国も年率で1100万台水準と回復力は弱い。そうした先進諸国市場の不調を補っているのが中国、インド、さらに東南アジアなどの新興市場だ。
◆最高だった2007年を上回るペース
スズキと日産の海外生産は、ここ2か月続けてそれぞれの月の過去最高を更新した。スズキは最大のシェアをもつインドの増産が寄与している。日産もこの春にインド工場が立ち上がったほか、中国での生産も過去最高水準が続いているのだ。
8社合計の海外生産は、2010年に入って2月(約96万台)を除き毎月100万台レベルで推移している。このペースが維持されれば、過去最高だった2007年(約1155万台)を3年ぶりに上回ることになる。自動車業界で久しく聞くことのなかった「過去最高」というフレーズが随所で復活しつつある。
海外生産の勢いを削ぐ懸念材料には、中国の部品メーカーで頻発しているストライキの影響がある。5月から今月にかけて一時生産停止したホンダは、4月に月次最高だった中国での生産が5月には一転して前年を16%下回った。
◆中国ストの影響は短期で取り戻せる
5月に中国生産が最高となったトヨタ自動車も6月はストの影響で一時ライン停止に追い込まれた。もっとも、生産停止の影響は「短期間で取り戻せる規模」(ホンダの近藤広一副社長)であり、上半期でならせば、業績に影響することはなさそうだ。
各社は年初から国内生産も大幅に伸ばしてきたものの、こちらはまだ金融危機以前の8割程度であり完全復調とはいかない。国内ではエコカー補助金終了後の10月以降、新車需要に反動減が出るのが必至となっている。
それだけに想定外の復調軌道に乗っている海外工場の高い稼働率は心強い。南欧諸国の財政危機がもたらしたユーロの大幅下落というアクシデントはあったものの、日本メーカーの海外生産のパフォーマンスはそれを充分補えるレベルにある。