【トップインタビュー】私の自動車ビジネス革命…豊田章男 トヨタ自動車社長

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豊田章男 トヨタ自動車社長
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  • SLIMモニターの前では毎週役員ミーティングが実施されている
  • 豊田章男 トヨタ自動車社長
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  • 総経理(社長)の葛原徹氏
  • 広汽トヨタ本社内に設置されたSLIMの管理ボードを前に説明する広汽トヨタ社長代理の友山茂樹氏

◆トヨタの哲学にのっとった21世紀のビジネス革命

GAZOO、G-BOOK、e-CRBおよびSLIM。トヨタのITサービスやシステム開発の背後にある豊田章男の姿は、過去の取材でも事あるごとに垣間見えた。しかし、今回のインタビューで強く感じたのは、一連のプロジェクトを豊田が後押しするだけでなく、より強くコミットし牽引してきたということだ。

そして、それらは単なるITソリューションの集合体ではなく、トヨタを内部から新時代に向けて変える壮大な「カイゼン」への試みである。豊田は「長期的な展望があったわけではなく、目の前の課題に試行錯誤しながら取り組んだだけ」と述懐するが、それでもこの15年の取り組みが成果を上げて、広汽トヨタという一つの理想型に結実したのは、豊田の姿勢にブレがなかったからだろう。

なぜ、ブレなかったのか。その理由は、豊田の考える「トヨタの理想像」が、トヨタの持つ哲学の基本に極めて忠実ということに尽きるだろう。ジャスト・イン・タイムに対する深い理解と尊敬。顧客の満足を第一に考える姿勢に、販売店やサプライヤーなどステークホルダーとの関係を重視する和の精神。トヨタにとって正しい在り方を今の時代に合わせて洗練させ、スキーム化・ビジネス化していく。その基本姿勢が揺るがないからこそ、試行錯誤の取り組みにも足元が揺るがず、中国において新たな自動車ビジネスのモデルケースとして具現化できたのだ。

そして、広汽トヨタである。同社はトヨタの一子会社・中国市場の橋頭堡という立ち位置を超えて、豊田が「21世紀のトヨタ」を模索する壮大なマザー・カンパニーになっている。いまや工場から販売・流通システム、ビジネスモデルに至るまで、トヨタで最も先進的なものは日本や北米ではなく、中国にある。豊田は広汽トヨタを「白いキャンバス」と評したが、そこに描かれているものが、21世紀の自動車ビジネスモデルであり、次のトヨタウェイに加わる諸要素なのだ。

豊田はトヨタの継承者として、ジャスト・イン・タイムをさらに進化させようとしている。

以下 単行本『TOYOTAビジネス革命』(ソフトバンククリエイティブ刊)につづく

第1章 トヨタのIT戦略を育んだ新社長・豊田章男の狙い
第2章 世界最先端の自動車ビジネスを展開する中国広汽トヨタ
第3章 かんばん方式を顧客の手元まで拡張する「SLIM」
第4章 顧客とのつながりを強化し利益をもたらす「e-CRB」
第5章 GAZOOからG-BOOK/G-Linkへ。進化するトヨタIT戦略
第6章 レクサスを中心に導入が進む国内の状況
第7章 TOYOTAビジネス革命の意義

《神尾寿》

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