【D視点】大姉御、大変身して登場…ジャガー XJ 新型

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変化は最小、完成度が最大

ジャガーファンにとって特別なクルマ、『XJ』の新型が発表された。ジャガーのブランドフィロソフィを具現化したスタイルは、際立った流麗さで、道行く人の視線を釘付けにしそうだ。販売開始は2010年3月となっているが、予約注文のサービスもある。

従来車に対して、全長がプラス22mm、車高がマイナス12mm、ロングホイールベース仕様も同様に設定されているので、大きさに付いてはキープコンセプトと言える。また、エンジンも5.0リットルV8・DOHCの1タイプに絞るなど、デザインの魅力に磨きをかけるために、開発エネルギーを集約したようだ。

従来型XJは、伝統的な凹凸の激しい四つ目のフロントマスクに、尻下がりのボディスタイルで、クラシカル度合いが、今や貴重な存在になっている。これに対して、新型のデザインは、和服をモダンな洋服に着替えたような大変身と言える。しかし『XF』のお姉さんと見なすと、変化は最小になり、完成度が最大になる。

XJシリーズは、ジャガーの1ブランドと言うよりは、ジャガーのコーポレートイメージそのものなので、ジャガーは後戻りの出来ない勝負に出たことになる。大変身の大姉御の晴れ姿で大向こうを唸らせて、ジャガーファンを安心させたいものだ。

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大変身が身上

1945年に発表されたジャガーの大型サルーン『マークIV』は、『マークX』まで発展した後、『420G』に改名され、さらにXJシリーズに至っている。コンパクトでスマートなデザインに大変身したXJシリーズは、アメリカでも大好評となり、ジャガーを代表するクルマにもなっている。

一方ジャガーは、1948年ロンドンショーで発表した『XK12』に少し遅れて、レーシングカーを製作してレースにも参戦していた。特に「Dタイプ」はルマンを三度制覇、その後、Dタイプのロードゴーイングバージョンとして『XKSS』を発売するが、これは工場火災などにより僅か16台の生産で終了してしまう。しかしXKSS のデザインはXK12の発展型に吸収され、大成功を収めた『Eタイプ』に大変身した。

これらジャガーの主力モデルの変遷を観察すると、デザインアイコンを含めて、伝統を守ることに重点を置く他のラグジュアリーカーメーカーとは違って、ジャガーの変化の激しさに気付かされる。

ジャガーの前身から数えると80年以上の歴史のある会社だが、本格的にラグジュアリーカーを製作してからは、60年程の歴史になる。老舗のラグジュアリーカーメーカーに比べると新参者であり、変わり身の早さで生き残ったようだ。歴史の必然が、XJ新型の大変身を生んだとも言える。

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お買い得感はあるか

ジャガーは創立1922年と歴史のあるカーメーカーだが、当初の社名「スワロー・サイドカー・カンパニー」が示す通り、主にサイドカーを作る傍ら、コーチビルダーの仕事もしていた。1933年には、全てを自社設計した『SS1』発表を機に、社名を「SSカーズ・リミデッド」にしたが、1945年には、更に「ジャガーカーズ・リミテッド」に改名した。

その3年後に発表した2ドアクーペ、XK12が、ジャガーの名前を世界に広めることになる。この成功は、競合ラグジュアリーカーと比べても遜色の無い性能とデザインでありながら、圧倒的に低い価額によるところが大きかったと言われている。しかし、重厚なデザインの既存ラグジュアリーカーに対して、一般にも馴染み易いカジュアルなデザインのラグジュアリーカーであったことも見逃せない。

この考え方は、現在のジャガーのブランドフィロソフィ、「美しく、早いクルマ」にも、大筋では引き継がれているように思われる。しかし、ジャガーの重要な美点であったお買い得感については失われつつある。加えてXJ新型も、従来型比で10 - 26%程の価額アップになっている。

10万ルピーと言う驚異的低額を発表した『ナノ』で知られる、インドのタタの資本注入をチャンスに、創業者ウィリアム・ライオンズの信念「速くて、美しく、しかも安価」を復活させて、昔のように心躍らされるジャガーになって欲しいものだ。

D視点:
デザインの視点
筆者:松井孝晏(まつい・たかやす)---デザインジャーナリスト。元日産自動車。「ケンメリ」、「ジャパン」など『スカイライン』のデザインや、社会現象となった『Be-1』、2代目『マーチ』のプロデュースを担当した。東京造形大学教授を経てSTUDIO MATSUI主宰。【D視点】連載を1冊にまとめた『2007【D視点】2003 カーデザインの視点』を上梓した。
《松井孝晏》

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