トヨタの新型ハイブリッド専用車『SAI』の生産が行われるのは、トヨタ自動車九州、通称九州工場。同じ車体、動力機構を使うレクサスブランドの『レクサスHS250h』と同一ラインでの混流生産だ。
レクサスとの混流生産は、両モデルの開発の初期段階から決まっていた。レクサス基準に合わせた設計となるためコスト面では不利だが、高級車にふさわしい高精度なボディ作りという点ではかなり楽であったという。
「たとえば溶接。レクサスラインでは、1行程ごとにかなりまとまった数の溶接を行います。なぜならば、溶接前にボディを仮組みしてからラインを動かして振動が加わったり、時間が経って自重でたわんだりすると、ボディ各部の部品の合わせが微妙にずれたりする。レクサスの場合、そういう狂いをできるだけ少なくするよう、短時間で驚くほど多くの溶接を施すんです」
「SAIはトヨタブランドで、価格もレクサスに比べるとかなり安いですが、ボディシェルの品質はレクサスと変わりません。その点、コンパクトな高級車として非常に付加価値の高いモデルに仕上げられたと自負しています」(チーフエンジニアの加藤亨氏)
SAIはレクサスHS250hと同様、トヨタのミドルクラスモデルの基本となる「新MCプラットホーム」のトップモデルに位置する。サスペンションの形式や各部の仕様は、欧州戦略車である『アベンシス』に近いが、そのボディの品質はアベンシスに比べてさらに高いところを狙っているのだ。
価格的には、ほぼ同時期に発表されたRWD(後輪駆動)の高級車、『マークX』の中位グレード以上とバッティングするが、マークXがあくまで古典的な高級車像をイメージする保守的なユーザーを狙った商品性であるのに対し、SAIはハイブリッドシステムをはじめとするメカニズムの先進性や目に見えない部分の品質の高さといった次世代感を求めるユーザーへの訴求を狙ったモデルと言える。