話せば長いことながら、結論から言うと、ボクは次のように投票した。
*VW『ゴルフ』:10点
*トヨタ『プリウス』:6点
*ホンダ『インサイト』:4点
*アルファロメオ『ミト』:3点
*マツダ『アクセラ』:2点
話題のハイブリッド車にあえて10点を投じなかったのは、素朴な疑問があったからだ。ハイブリッドは渋滞など、自由に走れない状況でとくに燃費優位性が大きくなるシステム。極論を言えば、自動車メーカーがハイブリッド車をたくさん販売して渋滞が増えるほど、ユーザーはその燃費メリットを享受できる。
しかし、渋滞のなかで「オレのクルマは燃費がといい」と言うことが、私たちにとって幸せだろうか? 自動車メーカーがクルマをたくさん売るためにハイブリッドに傾注するのは当然だとしても、それが「クルマ好きの幸せにどれだけ資するか?」にボクは疑問を抱くのだ。
だから、ゴルフ。TSI+DSGの高効率は自由に走れる状況でこそ発揮され、自制心を持ってアクセルを踏めばインサイトに迫る燃費を記録できる。「踏む自由」と「それを抑える自制」のバランスは、ドライバーの責任。この責任を私たちクルマ好きが受け入れていくことに、ボクは、クルマの未来がかかっていると思う。
デザイン評論家としてはもちろん、ゴルフのシンプル&ピュアなデザインも評価した。ドライバーの責任で結果(=燃費)が出るという合理性を、無駄な要素のないシンプルなフォルムが体現している。ビートルや初代ゴルフを思い出せば、シンプルさはVWのアイデンティティ。言わばこれは原点回帰のデザインだ。プリウス/インサイトも先進的でいいけれど、エコの風が吹くなかで「クルマ好きの幸せ」という原点を考えたくなったボクにとしては、ゴルフにより共感するのである。
千葉匠|デザインジャーナリスト/AJAJ理事
デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ理事。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは10年前から審査委員長を務めている。