【新連載:井元康一郎のビフォーアフター】東京モーターショーのEV視線

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このたび、連載コラム「ビフォーアフター」がスタートすることになった。メインテーマは脱石油、低資源、低環境負荷などのエコロジー技術がもたらすクルマの“劇的変化”だ。

今日、自動車業界で流行している決まり文句に “100年に1度の変革期”がある。19世紀にエンジンを使って走るクルマが生まれてから、今日に至るまでその原理はほとんど変わることがなかった。が、石油の高騰や地球温暖化などによって、低炭素のニーズが急激に高まり、クルマに劇的な変化が求められるようになった。

変化にはいろいろなものがある。クルマの電動化、すなわちEV化。クルマを格段に軽く作るための非鉄化、レアメタルやレアアースの使用量を大幅に削減する省資源化、等々。

これらの技術開発はとても難しく、分野によっては20年、30年といった長い時間がかかる。世界の自動車メーカーにとって、その劇的変化のための技術やノウハウを獲得し、大量生産にこぎ着けることが、生き残りのための最大の条件となっている。本コーナーではそういう技術開発の動向や業界におけるバトルの様子をつぶさに見て、レポートしていくことにする。

10月23日、日本の自動車業界にとって最大のイベントである第41回東京モーターショー2009が開幕する。フランクフルト、パリ、デトロイトなどと並ぶ主要国際モーターショーであることを自負してきた東京モーターショー。しかし、今回は海外主要メーカーすべてが出品を見送り、もはやローカルショー同然。「名古屋ショーや大阪ショーのほうが賑やかになるんじゃないか」(自動車業界紙記者)という声が聞かれるほどの状況だ。

その東京モーターショーにとって、頼みの綱となっているのが環境技術。主催者である日本自動車工業会の青木哲会長は、「環境技術では日本は世界の最先端。東京モーターショーの発信力は変わっていない」と主張する。

今回は各社がEV(電気自動車)やFCEV(燃料電池車)、PHEV(プラグインハイブリッドカー)などを競って出展する見通しで、さながら“EVショー”の様相を呈している。

が、EV最大の中核技術、普通のクルマではエンジンに相当するバッテリーの開発・製造を行う企業は今回、ほとんど姿を見せていない。EVに使う大型リチウムイオン電池を手がけているのは傘下に日立ビークルエナジーを擁する日立オートモーティブシステムズくらいで、三洋電機やGSユアサといった他の大手の出品はない。自動車産業の最先端を見せる総合ショーに東京モーターショーを位置づけるならば、その大黒柱である環境技術に関連した企業を呼び込むといった改革が求められるところだ。

今後の課題はともかく、環境技術を前面に押し出す今回のショー。その中心的役割を担うEV群の見所は、バッテリーなどEVテクノロジーの先進性そのものより、エンジン車とは商品特性がかなり異なる EVを社会に融け込ませ、普及させるにはどういうクルマ作りをすべきかという提案のほうがメインとなるだろう。

中でも注目すべきは“部分的EV”とすることでクルマの電気化、低価格化、性能維持の一石三鳥を狙うトヨタのプラグインハイブリッドカー。もうひとつは、ホンダのEVスクーター『EVE-neo』。

二輪EVは一見地味だが、配達用バイクを8万台保有する日本郵政関係者も二輪車メーカーにラブコールを送るなど、密かに熱いまなざしを浴びている。EVの最大のネックであるバッテリーについても、四輪EVほど大型のセルを必要としないことから、価格面でも普及させやすい。まさに“EV最前線”とも言えるカテゴリーなのである。

「実は、すでにあるメーカーが試験的に二輪 EVを郵便事業に納入したが、強度やスペックの点でまだ実用に耐えないという結論が出た」(業界関係者)と、二輪車といえども実用EVのハードルは低くはない。EVE-neoは来年発売する二輪EVの提案モデルに位置づけられるだけに、業界関係者の注目を集めそうだ。

脱石油の最終形の一つとされるEV化はまだ第一歩を踏み出したばかり。東京モーターショーは各社が商品や技術力をアピールするための場であるが、同時にこうしたEV社会の未来像をユーザーにアピールする絶好の機会でもある。プロモーションにはそういう視点も盛り込まれるべきだろう。

プロフィール
井元康一郎 いもと・こういちろう
鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。「ビフォーアフター」では、環境・エネルギーを主体として、100年に1度と言われるクルマの劇的変化をリポートする。
《井元康一郎》

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