これまで日本市場は、キャリアが構築したエコシステムの中で、メーカーが「端末」を作り、販売もキャリアの流通チャネルを用いることでコントロールしてきた。コンテンツやサービスもすべてキャリアが策定した仕様や認証・課金プラットフォームの上で流通しており、それらが海外市場との壁になっていた。
日本ではいち早くAppleのようなエコシステム型のビジネスモデルを導入していたが、それが国内市場が基盤になるキャリア主導のものだったために、どうしてもグローバル市場との連動や海外展開で後手に回っていたのだ。
しかし、Appleのように国やキャリアの枠にとらわれず、洗練された独自のエコシステムを世界展開するメーカーが現れたことで、かつての「キャリアしか使いやすく統一感のあるエコシステムは作れない」(キャリア幹部)という前提や意識が崩れ始めたのだ。後編で詳しく触れるが、すでに一部の日本メーカーは、ビジネスのグローバル化を視野に独自のエコシステム構築を模索し始めている。
iPhone 3Gが「黒船」と言われるのは、単に海外メーカー製の人気モデルだから、ではない。日本の携帯電話業界に対して、今までの常識を覆し、タブーを破る行為を、とても洗練された形でやってのけたことが「黒船」なのだ。