低迷の国内市場と並ぶ規模に
国内自動車生産が高水準で推移している。今年は5年連続で1000万の大台を確保するにとどまらず、1993年以来13年ぶりに1100万台を突破する見通しだ。国内市場は低迷続きだが、輸出の好調が生産を支えている。ガソリン高で、燃費性能のよい日本車が世界各地で受け入れられていることが大きい。
とくに北米はトヨタ自動車やホンダが今春からコンパクトカーの輸出を始めたこともあり、仕向け地別では最も高い伸びとなっている。すぐさま日米間で自動車通商摩擦が再燃することはないにしろ、警戒すべきレベルに入ってきたのではないか。
今年1−7月の輸出は、前年同期比17%増の約337万台。7月まで12カ月連続のプラスとなっており、今年に入ってからは毎月2ケタの伸びをキープしている。年間では570万から580万台くらいとなりそうで、不振の国内市場とほぼ同じボリュームが見込まれる。
◆ガソリン高騰も味方にしたエントリーカー
96年には370万台に落ち込んでいたことを勘案すれば、輸出の復活ぶりが際立っている。1−7月の実績では、最大の輸出先である北米が31%もの増加となり、全体のほぼ4割を占めた。仕向け地別に伸び率を比較しても2割台と好調だったアフリカや中東を上回って最高だ。
原油の高止まりが続くと見た北米のユーザーは日本車の燃費性能に軍杯をあげている。今春からトヨタは『ヤリス』シリーズ(日本名『ヴィッツ』と『ベルタ』)、ホンダは『フィット』と相次いでエントリーカーを投入した。この分野で急速に勢力を伸ばした韓国車に対抗する狙いであったが、ガソリン価格の高騰も味方して出足は好調だ。
これらはいずれも日本製であり、北米輸出急増の一因となっている。7月の米国販売でフォードモーターを捉え、初めて2位に浮上したトヨタは今年、米国で前年より10%多い246万台の販売を計画している。8月までの累計では前年を11%上回り、順調だ。
◆北米生産比率が半数を割ったトヨタ
ただ、日本からの輸出依存は高まっている。米国トヨタ自動車販売のまとめによると、8月には販売に占める北米生産車の比率が48.9%と、ついに半数を割り込んだ。今年は北米生産車比率が前年の62%から53%レベルまで落ちると踏んでいるトヨタだが、単月とはいえ過半数割れは想定外だったのではないか。
今のペースが続けば、オール日本車の今年の北米向け輸出は240万台レベルに達する。これは米国製部品の調達拡大を巡って日米関係がこじれていた90年当時に相当する。北米での雇用貢献などから「自動車の通商関係は基本的には良好」(トヨタ首脳)だろうが、薄氷の域に足を踏み入れつつある。